阪神・淡路大震災で西宮市甲東園の自宅が全壊し、妻幸恵(さちえ)さん=当時(34)=と長女愛梨(えり)ちゃん=同(5)=を亡くした羽中健二さん(62)=神戸市兵庫区=は、長男敬登(けいと)さん(30)と震災後の日々を歩いてきた。
ようやく未来のことを考えるようになったのは敬登さんの中学卒業前、震災から15年近くたっていた。
「震災のことは伝えてきたんですけど、あらたまって2人で話をすることはありませんでしたね」。健二さんがこの30年を振り返る。「『乗り越える』っていう言葉も嫌で。亡くなった2人を置き去りにしていくことになるでしょ」。がれきの下から見つかったホームビデオは一度も再生していない。