旧優生保護法に基づく人工妊娠中絶手術の被害を受け、一時金支給の申請後に会見した夫婦=22日午後、兵庫県庁
旧優生保護法に基づく人工妊娠中絶手術の被害を受け、一時金支給の申請後に会見した夫婦=22日午後、兵庫県庁

 旧優生保護法(1948~96年)に基づく強制不妊、人工妊娠中絶手術の被害者らへの補償法が施行されたのを受け、過去に中絶手術を強いられたという兵庫県内の80代女性が22日、県庁で一時金の支給を申請した。県によると17日の法施行後、申請は県内で初めて。今後は国の審査会で支給の可否が判断される。(岩崎昂志)

 補償法では、旧優生保護法に基づく強制不妊手術を受けた人に補償金1500万円を支給し、配偶者は500万円、中絶手術の被害者も一時金200万円を受け取れる。都道府県の窓口で申請を受け付ける。

 22日に申請した女性は生まれつき聴覚障害があり、支援者らによると昭和40年代前半に親族や周囲からの求めで中絶手術を強いられた。その後、2人の子どもに恵まれたが、女性は「手術の記憶はずっと残っていて、ことあるごとに頭に浮かぶ。誰にも知られたくなくて、相談できなかった」と手話で語った。

 申請手続きは女性側の意向で報道陣に公開され、支援する兵庫県聴覚障害者協会の関係者や弁護士らも同席。女性は夫とともに窓口の職員に関連書類を託した。女性と夫は「苦しい日々だった。申請できてうれしい。(補償法での救済を)知らない人にもぜひ申請してほしい」と呼びかけた。

 県は健康増進課内に補償の専用相談窓口を設けており、希望者には出向いて対応する。TEL078・362・3439、ファクス078・362・3913

【旧優生保護法】「不良な子孫の出生を防止する」との目的で1948年に制定され、障害や精神疾患を理由に、本人の同意がなくても不妊や中絶の手術を可能にした。96年、差別に当たる条文を削除し、母体保護法に改称。最高裁が2024年7月に旧法を違憲と判断して国の賠償責任を認めたことを受け、訴訟に参加していない被害者についても救済を目指して議員立法で補償法が制定された。