神戸新聞NEXT
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 兵庫県稲美町で2021年11月、民家が全焼して小学生の兄弟2人が死亡した事件で、殺人と現住建造物等放火の罪に問われた兄弟の伯父、松尾留与被告(54)を一審に続き懲役30年とした大阪高裁判決について、大阪高検は28日、上告を断念したと明らかにした。同日が上告期限だった。

 14日の高裁判決は、「量刑が著しく軽く不当」として再度死刑を求めた検察側の控訴を棄却した。大阪高検の小橋常和次席検事は「判決内容を十分検討したが、適法な上告理由までは見いだしがたかった」とのコメントを出した。

 判決によると、被告は21年11月19日深夜、兄弟の両親と同居していた自宅に火を放ち、就寝中だった当時小学6年の松尾侑城さん(12)と同1年の眞輝さん(7)を急性一酸化炭素中毒にさせて殺害した。

 高裁判決は、妹夫婦である兄弟の両親の被告に対する行き過ぎた態度に、恨みを晴らそうとした動機について、「無理からぬ面があった」とした一審の神戸地裁姫路支部判決を追認。親族間のトラブルに起因したことや、落ち度がない兄弟を殺害した点も考慮しており、量刑は「軽すぎて不当とは言えない」とした。

 上告断念を受けて兄弟の父親(61)は「子どもたちの命が軽視されたような判決で、上告してほしかった」と無念さをにじませた。被告に対しては「子どもたちの命を奪った罪を一生背負って生きてほしい」と話した。