作品展の目玉になる大皿を持って笑顔を見せる鈴木順子さん=西宮市内(撮影・斎藤雅志)
作品展の目玉になる大皿を持って笑顔を見せる鈴木順子さん=西宮市内(撮影・斎藤雅志)

 ろくろに載せた粘土を見つめ、薄く、細かく削っていく。

 鈴木順子さん(50)=西宮市=の右手は力が入りにくい。それでも道具を一心に動かす。手つきは丁寧だ。陶芸仲間が「たいしたもんや」と褒める。順子さんがやわらかく笑う。

 2005年4月の尼崎JR脱線事故で2両目に乗っていて、生死の境をさまよった。約1年後、やっと退院したが、脳と体に大きな障害が残った。

 事故を境に一変した日々を、母もも子さん(77)と周囲が支え、懸命に生きた。

 陶芸は順子さんが小学校の頃から親しんだ特技だ。事故後、リハビリを兼ねて再開した。今月17~20日に仲間と作品展を開く。

 「記憶がなくならないうちに、形にしたいと思ってます」。後遺症で記憶力が低下した順子さんは、そんな言葉を口にする。

 優しさとぬくもりがあふれる食器や時計の作品には、親子の回復の歩みが層のように積み重なっている。

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