斎藤元彦知事(資料写真)
斎藤元彦知事(資料写真)

 旧優生保護法(1948~96年)下で障害者が不妊手術を強制された問題で、国家賠償請求訴訟に勝訴した原告をはじめとする兵庫県内の被害者と斎藤元彦知事が26日に面会することが、関係者への取材で分かった。県が過去に独自の優生施策を展開したことを踏まえ、知事が直接謝罪する方針で調整している。

 県は66~74年、「不幸な子どもの生まれない県民運動」を展開。精神障害者の不妊手術の公費負担など、優生思想の色濃い施策を独自に進め、運動は全国の自治体に波及した。

 こうした背景から、国賠訴訟の原告や弁護団は県に対し、謝罪や過去の施策の検証と総括の必要性を訴え続けてきた。斎藤知事は今年1月の定例会見で「県として被害者をはじめ関係者におわびしたい」と述べたが、原告団らはあくまで対面での謝罪を求めていた。

 関係者によると、国賠訴訟に勝訴した原告の小林宝二さん(93)=明石市=と鈴木由美さん(69)=神戸市=ら手術の被害者たちと弁護団、支援団体が出席を予定する。

 原告と弁護団はこれまで「県は独自予算を組んで、優生思想と差別意識を社会に広げた。行政としてけじめをつける意味でも直接の謝罪に意味がある」との見解を示してきた。

 一連の国賠訴訟は2018年以降、兵庫を含め全国で起こされ、昨年7月、最高裁判決が旧法を違憲として国の賠償責任を認めた。判決を受け、既に岸田文雄・前首相や石破茂首相が原告らに直接謝罪し、偏見や差別のない共生社会の実現を目指す決意を明言している。(那谷享平)

【旧優生保護法】「不良な子孫の出生を防止する」との目的で制定。障害や精神疾患を理由に、本人同意のない不妊手術や中絶手術を認めた。国の推計で約2万5千人が不妊手術を受けさせられた。1996年に差別的な条文を削除し、改称。最高裁は2024年7月の判決で旧法は憲法違反と判断。1月、新たな補償法が施行された。