神戸市垂水区の山陽電鉄の踏切内で1月、女性2人が電車にはねられ死亡した事故を巡り、国土交通省や市、兵庫県警などが再発防止に向け、この踏切の特異な構造を改良する方針を固めた。2人は誤って踏切内で目前の国道の信号待ちをしていたとみられる。地元では危険箇所として認識されてきたが、廃止には賛否があり、緊急的に国道の横断歩道をずらし、待機スペースを広げる。(児玉芙友)
■横断歩道ずらし、待機場所拡幅
事故は1月9日午後3時50分ごろ、同区西舞子1の山陽電鉄西舞子-大蔵谷間の「山田川西踏切」で起きた。垂水署によると、阪急神戸三宮発山陽姫路行き普通電車に女性2人が接触し、死亡した。いずれも観光で訪れた中国籍の20代の女性だった。
現場は山陽電鉄とJR神戸線が並走しており、遮断機や警報機がある。すぐ南側には国道2号の横断歩道(信号機付き)が設けられている。
同署によると、2人は事故前、遮断機が下りた踏切内で横断歩道に向いて立っている姿が目撃されていた。踏切の内側には、オレンジ色の車止めのポールがあり、2人が信号待ちを示すものと勘違いし、「待機場所を誤った可能性がある」という。
踏切と国道の間に待機スペースがあるが、この構造にも問題がある。遮断棒から車道までの距離は約1メートルと狭く、さらにスペースは国道に向かって急な傾斜となっている。ある住民は「スピードを出して行き交う車が怖いし、傾斜があって立ちにくい。土地勘がなければ線路内で待つこともあるのでは」と話す。
山陽電鉄によると、2004年以降、この踏切で4件の事故が発生。うち1件は人と接触し、残る3件はいずれも、待機スペースで信号待ちをしていた自転車やミニバイクの後部と電車がぶつかった。
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なぜ、こうした特異な構造になったのか。現場の踏切道は神戸市道だが、山陽電鉄とJR西日本がそれぞれの箇所を保守管理している。ただ、踏切ができた経緯などは不明という。
死亡事故後、国交省兵庫国道事務所や県警も加わり、再発防止策を協議。各事業者が踏切の廃止に向けて検討することを確認した。ただ、市が2月に周辺住民に行ったアンケートでは、危険だと知りつつも、利便性から存続を望む声が一定程度あった。
このため山陽電鉄は5月、緊急対応として、中国語や英語など五つの言語とイラストを線路内の路面に描き、立ち止まらないよう注意を呼びかけた。
待機スペースの構造上の問題を解消するため、国道事務所や市などはスペースの拡幅を決めた。横断歩道と信号機を横にずらし、スロープにして傾斜を和らげ、さらに待機場所の幅を広げるという。
既に設計段階に入っており、国道事務所は「危険な状況をどう改善していくか、住民の理解を得ながら早く手を打ちたい」としている。