「まちなか自習室」を利用し、受験勉強に励む高校生=神戸市中央区磯上通4、120WORK PLACE KOBE
「まちなか自習室」を利用し、受験勉強に励む高校生=神戸市中央区磯上通4、120WORK PLACE KOBE

 女性の社会進出や共働きの定着に伴い、子育てのしやすさを定住地の決め手にする家庭が増えている。神戸市は近年、乳幼児向け育児品の定期便や、若者の自習スペースの充実、高校生の通学定期券補助など、生活に寄り添った支援に力を入れる。人口減に歯止めがかからない中、子育て世帯が安心して住み続けられるまちとは。26日投開票の市長選を前に取材した。

 10月上旬の夕方、神戸市中央区のコワーキングスペース「120WORK PLACE KOBE」に、ビジネスマンに交じって黙々と勉強する高校生たちがいた。

 同施設は、市が7月に始めた「まちなか自習室」の協力事業所の一つ。市内に在住・在学する中高生の自習スペースとして、席を無料で開放する。アクセスの良さから好評で、10月からは利用枠を4席から6席に増やした。

 同市北区の高校3年、岩崎慧奈さん(17)は毎日利用しているといい「お金もかからず、集中できる環境はありがたい」と話す。「-自習室」はカフェやカーディーラーなど市内47カ所に点在し、既に中高生3千人超が登録している。

 乳幼児から、高校生まで-。神戸市が目指すのは、成長段階に沿った施策の充実だ。独自の取り組みが功を奏し、自治体アンケートを基に日経BPが調査した昨年の「共働き子育てしやすい街ランキング」で、180都市中1位に輝いた。

 2022年の36位、23年の4位から飛躍した背景には、出産後の親子が助産院で休息を取る「産後ケア」の充実や、学童保育を希望する全学年受け入れ体制の実現、一時保育サービスのある無料コワーキングスペースの設置など「共働きの親のニーズに即した施策を次々と打ち出している」(日経BP社)点が大きい。

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 ただ、急速に進む少子化の先行きは不透明で、市は施策の選択と集中の難しさを抱える。

 同市須磨区で子ども2人を育てる女性(47)は子どもの医療、給食費が無償化されている明石市と比べ「医療、給食の無償化は多くの人が恩恵を受ける。正直うらやましい」と漏らす。

 中学3年までの通院費で無償化(一部所得制限あり)を実現していないのは、県内41市町のうち神戸市のみ。市は、高校生(18歳)までの入院費自己負担ゼロや通院費の助成拡充を進め、段階的に支援の幅を広げるが、インパクトの弱さはぬぐえない。

 神戸市から市外への24年の世代別転出者をみると、人口約30万人の明石市へは0~4歳が126人、25~34歳は490人。一方、人口計約150万人の阪神間6市へは、0~4歳児が計8人、25~34歳が計639人。子育て施策で全国的に注目された明石市が、若い世代の移住先として選ばれている実情がうかがえる。

 神戸市こども未来課の担当者は「隣り合う市で人口を奪い合うより、やるべきことをやっていくことが重要」と「都市間競争論」をかわす。

 想像以上のスピードで人口減が進み、財源も限られる中、市は相談体制の充実や手続きの簡素化を含め、各家庭に求められている支援への注力を目指す。「時代の変化が激しいからこそ持続可能な行政運営が求められる」と担当者。「他都市の良い所は参考にしながら切れ目のない施策を提案していきたい」と話した。(久保田麻依子)