立花孝志容疑者を乗せて兵庫県警本部を出る警察車両=10日、神戸市中央区下山手通5
立花孝志容疑者を乗せて兵庫県警本部を出る警察車両=10日、神戸市中央区下山手通5

 兵庫県の告発文書問題に絡み、1月に死去した竹内英明元県議に関するデマを発信したとして、名誉毀損の疑いで政治団体「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志容疑者(58)が9日に逮捕され、1週間が過ぎた。当初は違法性を争う姿勢とされたが、逮捕5日後に「罪を認めて謝罪する」と弁護人が表明。立花容疑者は別事件で刑の執行猶予中のため、今後の司法判断をにらんだ戦略との見方もある。

 立花容疑者は9日午前3時40分ごろ、堺市の駐車場で逮捕された。アルバイト先である大阪・ミナミのバーで勤務後、関係先に立ち寄るところだったという。

 逮捕容疑は昨年12月13~14日、竹内氏について「警察の取り調べを受けているのは多分間違いない」などと街頭演説で発言したほか、竹内氏の死亡直後の今年1月19~20日、交流サイト(SNS)や応援演説で「明日逮捕される予定だった」などと発信した疑い。

 いずれも1月20日に県警本部長(当時)が「事実無根」と否定している。

 遺族から告訴された後も、立花容疑者は「違法性が阻却されるだけの根拠があった。不起訴または無罪を確信している」と主張していた。逮捕直後も、接見した弁護士によると、同様の訴えだった。

 ところが逮捕5日後の11月14日になって事態は変わる。弁護人に選任された別の弁護士は、立花容疑者が罪を認める方向になったと表明。遺族に謝罪し、示談を申し入れるとした。

 遺族側の代理人弁護士は、遺族が示談を拒否したとした上で「真摯な反省ではなく、刑を軽くするためなのは明らか。略式起訴、罰金刑を狙っているのだろう」と批判した。

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 立花容疑者は、NHK受信契約の個人情報を不正に取得し、ネットに流出させるとNHKに迫ったとする威力業務妨害罪などで懲役2年6月、執行猶予4年の判決が2023年に確定。執行猶予の期間は終わっておらず、起訴か略式起訴か不起訴かで服役の可能性が変わる分岐点にいる=表。

 刑法(6月の改正前)の規定では、執行猶予中に別の事件で禁錮以上の実刑が確定すれば、執行猶予は取り消され、前の刑と合わせて服役することになる。

 仮に罰金刑なら、執行猶予を取り消すかどうかは裁判所の裁量で判断される。ただ法務省の統計によると、罰金刑で取り消されて服役した例は近年ほとんどない。

 また新たな事件が禁錮以上の判決であっても、その期間が1年以下(改正後は拘禁刑2年以下)であれば、情状酌量によって再び執行猶予が付く余地もある。

 立花容疑者の弁護人は「一番メリットがある弁護方針を採るべきであろうと、当初から自白の方を勧めていた」と説明。立花容疑者が「情報源」とした人物に接触し、有利になるよう動いていくとも述べている。