第98回選抜高校野球大会に出場する東洋大姫路は21日、第1試合で花咲徳栄(埼玉県)と対戦する。2003年の第75回大会で、延長引き分け再試合にもつれ込む激闘を演じた相手だ。当時、正捕手としてグエン・トラン・フォク・アン投手とバッテリーを組んだ菰方崇博さん(40)=姫路市=は、あの試合で「人生が変わった」と振り返る。感慨を胸に、アルプス席から後輩たちの戦いを見守る。(船田翔太)
■アン投手とバッテリー組む
花咲徳栄とは23年前、準々決勝で対戦。延長十五回で決着がつかず、大会で41年ぶりの再試合に。エースのアン投手は、延長十五回191球を一人で投げ抜き、2失点に抑える力投を見せた。
菰方さんは配球で左腕を支えた。アン投手と相談し、実戦では使っていなかったスライダーを3回戦から解禁し、相手打線を翻弄した。終盤、球威の落ちる場面ではカーブを織り交ぜ、緩急をつけた。
2年の夏からバッテリーを組んでいた2人にとって、信頼関係を実感する一戦でもあった。普段は強気でサインに首を振ることも多かったアン投手が、この試合はほとんど首を振らず「ミットめがけて投げ込んでくれた」。
菰方さんも捕手として三塁走者の本塁への進入をブロックし、自慢の強肩で盗塁を阻止して追加点を許さなかった。「全員が必死。死力を尽くした」
再試合の結末は、菰方さんの野球人生で最も記憶に残る出来事になった。延長十回、相手投手の暴投の間に味方の三塁走者が生還し、劇的なサヨナラ勝ちを収めた。菰方さんは「よっしゃー」と叫んで走者に駆け寄り、歓喜した。
しかし、時間がたつにつれ「どっちが勝ってもおかしくなかった」と思うように。力の差だけではなく、運や試合の流れで勝者が決まる…。「野球っておもろい」。奥深さに気づいた。
4人きょうだいの長男だった菰方さんは、両親に負担をかけまいと、高校卒業後すぐに就職するつもりだった。だが「まだ野球してもいいんかな」と心境が変わった。学費免除の条件で誘いのあった天理大学に進学し、野球を続けた。
その後も競技に関わりたいと中学教諭になり、野球部の顧問も務めた。「あの一試合で自分の人生は変えられた」。当時の新聞記事の切り抜きを見つめ、そう語った。
「いつも通りの力を発揮すれば最後に勝利が訪れる。自分たちを信じて、一生残る試合にしてほしい」。当時と同じアイボリー色のユニホームに袖を通す後輩たちに、菰方さんはエールを送る。






















