猛虎の覇権奪回は、兵庫出身の右腕二枚看板なくしては語れない。2年ぶりにプロ野球セ・リーグを制覇した阪神タイガースの先発陣で勝ち頭となった才木浩人、村上頌樹の両投手。今季初めてそろって2桁勝利を達成し、記録的な快進撃を先導してきた。「ゲームメークがすごい」(才木)「ピンチに強い」(村上)。互いを認め合い、競い合ってきた同級生コンビは、さらなる頂へ歩みを止めない。(初鹿野俊)
神戸市西区出身の才木は須磨翔風高校から入団し、プロ9年目。現時点の12勝、防御率1・62はいずれもリーグトップで、初の個人タイトルも射程圏だ。最大の魅力は189センチの長身から投げ込む最速150キロ台後半のストレート。村上は「(キャッチボールから)常に良い球を投げている。怖い」と球威にうなる。
対する村上は南あわじ市出身で大卒5年目。38年ぶりの日本一に輝いた2023年はセ・リーグの最優秀選手(MVP)と新人王を史上初めて同時受賞した。初の開幕投手を務めた今季は自己最多の11勝。うち完封勝利が3度と、才木(2完封)の上を行く。才木は「コントロールがいい。真っすぐの強さはありながら、変化球全部の球種が使える。テンポも良い」と称賛の言葉を並べる。
活躍の裏には、投手出身で今季就任した藤川球児監督の存在もありそうだ。登板間隔に固執しない柔軟な起用法で「うまくコンディションを見ながら、気遣ってくださり、恩恵を受けている」と才木。村上も「選手を見ながらやってくれている」と同調する。
2人は23年の栄冠にも貢献したが、才木は先発ローテーションを守れなかった当時を「悩ましかった」と振り返りつつ「今はしっかり入れている。自覚も自然と出てくる」と先発陣の柱としての責任を強調する。
村上は6月、才木は11月で27歳。それぞれ連戦初戦の先発マウンドを託され、「カード頭を任されて、2人で勝っていければ優勝に近づくなと感じていた」と村上。才木も「2本柱でやってこられたことが、今この位置にいる理由の一つ」とうなずく。
クライマックスシリーズ、さらにその先の日本シリーズへと戦いは続くが「(話題にするには)まだ早いっすね」と首を横に振った2人。2年ぶりの日本一返り咲きへ、地に足ついた両右腕が頼りになる。
【さいき・ひろと】神戸市立出合小、王塚台中から進んだ須磨翔風高では甲子園出場なし。2016年のドラフト3位で阪神入団。右肘のけがで一時は育成契約も経験した。昨季はキャリアハイの13勝。189センチ、92キロ。右投げ右打ち。背番号35。
【むらかみ・しょうき】南あわじ市立賀集小、南淡中を経て進んだ奈良・智弁学園高では3年春の選抜大会で全5試合を1人で投げ優勝。東洋大では大学日本代表。2020年のドラフト5位で阪神へ。175センチ、83キロ。右投げ左打ち。背番号41。