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青空に負けないほど真っ青な色の「上山樋門」。豊岡市が管理する=豊岡市城崎町上山
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青空に負けないほど真っ青な色の「上山樋門」。豊岡市が管理する=豊岡市城崎町上山
秋の夕日とミニサイズの「清冷寺樋門」=豊岡市清冷寺
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秋の夕日とミニサイズの「清冷寺樋門」=豊岡市清冷寺
ガラス張りの「進美寺川樋門」=豊岡市日高町赤崎
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ガラス張りの「進美寺川樋門」=豊岡市日高町赤崎
レンガ風の「谷山川樋門」はソーラーパネル付き=豊岡市出石町弘原
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レンガ風の「谷山川樋門」はソーラーパネル付き=豊岡市出石町弘原
六方排水機場の建物内にある操作室に常駐する山中峰一さん。六方水門の操作もここで行う=豊岡市六地蔵
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六方排水機場の建物内にある操作室に常駐する山中峰一さん。六方水門の操作もここで行う=豊岡市六地蔵

 兵庫県豊岡市内を流れる円山川に沿って車を走らせていると時折、川岸にぽつんとトレーラーハウスのような小屋が目に入る。ファミリータイプや、1人暮らしでも小さすぎるようなミニサイズなど大小さまざまで、澄んだ青やクリーム色など彩りもそれぞれ違う。結構な頻度で現れるこのかわいい小屋は何? 調べてみると、水害に悩まされてきた豊岡のまちを守る大切な施設の一部だと分かった。(石川 翠)

 訪ねたのは、国土交通省豊岡河川国道事務所(同市幸町)。河川管理課の小林宏樹専門官が「水門・樋(ひ)門のゲートを上下させるための操作室です」と教えてくれた。豪雨などで円山川の水位が上昇したときに、市街地などを流れる支川に水が逆流してあふれる「内水氾濫」を防ぐため、支川の出口の門を閉めるのだ。

 ちなみに、水門は堤防を分断してゲートを設置した規模の大きなもので、樋門は堤防の中に水が流れるトンネルのような水路が埋め込まれている小さな門だ。

 同事務所は、南北約40キロにわたって、円山川と、出石川などの支川沿いにある水門3、樋門24、支川から本川へ水をくみ出す排水機場5の計32カ所を管理している。他に、小屋の付いてない小規模なものなど64カ所は、豊岡市の管轄だ。

    ◆

 小屋の正体が分かったところで、集まってくれた同事務所の職員に「みなさんの一番かわいいと思う水門・樋門はどこですか?」と尋ねてみた。

 「かわいい… そういう目で見たことがないです」と困った顔をしながらも、「そういえば洋館風やガラス張りのところがある」と教えてくれた。

 洋館風といわれたのは同市出石町弘原の「谷山川樋門」。たしかにレンガのようながっちりとした外壁に、屋根にはソーラーパネルまで付いている。近くには建築家の故宮脇檀(まゆみ)さんが手掛けたデザイン性の高い出石中学校の校舎も見え、周囲の雰囲気にぴったりだ。

 樋門の操作は、多くが地域住民に委嘱されており、谷山川樋門を担当する森田好和さん(68)は20年間操作員を務める。「住民の間では、出石の城下町の玄関口にあたるので風情のあるデザインになったのではと言われてる」という。

 「進美寺(しんめいじ)川樋門」(同市日高町赤崎)は珍しいガラス張り。窓がほとんどない他の小屋に比べると、晴れた日に中から眺望を楽しんでみたいほど開放的なデザインだ。

 ゲートの幅に合わせて小屋の大きさも異なる。同市清冷寺(しょうれんじ)の「清冷寺樋門」の門は幅0・8メートルで、小屋もミニサイズにかわいく仕上がっている。

 サイズの違いは分かったが、大半が30年以上前に設置されているためデザインや色については「当時の流行なのか、腐食防止の塗料で安い色だったのか…」。真相は不明だった。

■地域住民、操作員として常駐

 六方川に設置された「六方水門」(豊岡市六地蔵)は幅18・5メートル、高さ10・5メートルの鉄板が2枚連なる市内最大の水門だ。さらに水門を閉じたときに堤防の内側の市街地などに水がたまらないよう、ポンプを稼働させて支川から本川へ水をくみ出すための「六方排水機場」が隣接している。

 2004年10月20日の台風23号では円山川が氾濫して7人が亡くなり、全壊333戸を含む約8千戸が損壊や浸水の被害を受けた。

 六方排水機場の施設内にある操作室に常駐している操作員の山中峰一さん(66)も被災者の1人だ。同市庄境の自宅が床上1・25メートルまで浸水。家族は避難して無事だったが、隣家の庭からはしごをかけて屋根に上り、2階の窓から室内に入ると、1階の土壁は崩れ落ち、家具も全て水に漬かっていた。

 その9年後、偶然操作員の募集を知り、地域を守る仕事に携わりたいと応募。操作室でモニターのチェックのほか、設備のメンテナンスで出入りする業者の対応などにあたる。「非常時にちゃんと動くようにしておくためには、何もない日頃の保全が大切」と話す。

 各樋門の操作もほとんどは委嘱された地域住民が担っている。2020年度には、国土交通省豊岡河川国道事務所から操作員への出動要請が13回あり、19年度(5回)の2倍以上。奈佐川にある福田第一樋門と新前川樋門は出動が12回で最多だった。18年の7月豪雨時には4日間連続の出動になるなど、一度の出動が長時間に及ぶこともある。

 中には40年近く従事している人もおり、地域の担い手探しも課題だ。同事務所では操作員の紹介や情報共有のために昨年9月から「川のまもりびと」を隔月で発行。同事務所のホームページでも閲覧できる。

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