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依頼主の要望を聞き、イメージを膨らませる西村太さん(右)=鳥取県岩美町
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依頼主の要望を聞き、イメージを膨らませる西村太さん(右)=鳥取県岩美町
地元飲食店を支援するテークアウト弁当の販売会。ブースのレイアウトにもこだわる=新温泉町浜坂
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地元飲食店を支援するテークアウト弁当の販売会。ブースのレイアウトにもこだわる=新温泉町浜坂
「エフ・エー・プロデュース」でこれまでに手掛けたロゴ=新温泉町歌長
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「エフ・エー・プロデュース」でこれまでに手掛けたロゴ=新温泉町歌長
「視覚に訴える」ロゴづくりはパソコンで行う=新温泉町湯
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「視覚に訴える」ロゴづくりはパソコンで行う=新温泉町湯

 但馬に「まちのトータルプロデューサー」として注目を集める人物がいる。兵庫県新温泉町の企画制作会社「エフ・エー・プロデュース」代表の西村太さん(50)。飲食店のPRから、同県朝来市の道の駅「フレッシュあさご」のチーズケーキの考案、香美町の発酵食品会社「トキワ」の城崎温泉街への出店まで、但馬の製品の売り込みを手掛けてきた。その優れた手腕に注目が集まっている。(末吉佳希)

 「但馬牛と八鹿豚のハンバーグ。但馬鶏の唐揚げもあります。いかがですか」

 ひっきりなしの注文の中で、立案した西村さんが買い物客に呼び掛ける。

 今月上旬、新温泉町浜坂のスーパー「ナカケー」で開かれたテークアウト弁当の販売会。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う「まん延防止等重点措置」で先月末から休業や時短営業している地元飲食店2店が出店した。

 「弁当を食べて味を知ってもらい、コロナ後に来てくれるファンが増えれば」と西村さん。同スーパーも賛同し、店舗の入り口近くのスペースを提供した。

 両店の人気メニューを弁当スタイルにして計120食分を用意。但馬牛と八鹿豚の合いびき肉を使ったハンバーグ弁当や、但馬鶏の唐揚げ弁当などは各700円。甘辛い味付けとご飯が合うみそカツ弁当などは各650円で販売した。

 わずか1時間足らずで完売し、西村さんは安堵(あんど)の表情を見せた。計4日間で約500食分を販売した。

     ◆

 西村さんは新温泉町歌長出身。商業英語を習得して1991年に大阪のアパレル商社に入り、海外ブランドを仕入れて関西を駆け巡った。「『見せ方』が問われるファッションの仕事は学びの連続だった」という。

 阪神・淡路大震災で、神戸市西区の自宅から会社に通うのが難しくなり、親の体調も悪かったため、新温泉町にUターンすることを決めた。

 土産菓子メーカー「寿製菓」(鳥取県米子市)に就職。2000年ごろ、チーズケーキのブームを受け、道の駅「フレッシュあさご」(朝来市岩津)で、「朝がくる町のチーズケーキ」というお土産を企画した。

 「朝来」の文字から取った「朝がくる町」というネーミングと、ホールケーキに見立てた真っ赤な太陽がデザインされた黄色の包装で人気を集める。

 08年、兵庫県香美町の発酵食品会社「トキワ」の営業企画部長時代には、豊岡市が城崎温泉の活性化のために同温泉街中心部に整備した店舗集合施設「木屋町小路」への出店に名乗りを上げ、お酢の専門店「城崎ビネガー」を立ち上げた。

 健康ブームでお酢の人気が高まりつつあり、「女性や若者の人気が高い城崎なら成功する」と確信。同施設の中でも入り口に近いスペースを確保できた。温泉街や和の風情を演出するため、外装はガラス張りに。着物姿のスタッフの作業が外から見えるようにした。

 「城崎の醍醐味(だいごみ)である外湯巡りの合間や湯上がりに飲む健康酢」をコンセプトとした。今も県外からのリピーターが多く、同社が課題としていたオンライン販売事業の拡大につながっている。

     ◆

 40代を節目に14年に独立。屋号は「FREE(フリー=自由)」「AGENT(エージェント=仲介者)」の頭文字を取った「エフ・エー・プロデュース」とした。

 土産品の開発や新たにオープンする飲食店の看板のデザインなど食に関係する依頼が多い。「かつての経験を全て生かせる仕事」と満足そうに語る。

 最近は、依頼主同士のつながりを生かしたビジネスも広がっている。ホームページのデザインを担った鳥取県の梨農家の男性から、形が悪いなど「訳あり品の使い道に困っている」現状を聞き、広報などを請け負った新温泉町の「カフェブルーム」のオーナーに声を掛け、スムージーとして売り出すことが実現した。

 この話は、会員制交流サイト(SNS)を中心に瞬く間に広がり、多くの人が飲みに来てくれたという。

 昨秋からは初の試みとして鳥取県岩美町でゲストハウスの立ち上げに携わっている。仕事は、依頼主が手掛けるクラフトビールのラベルと施設のロゴづくり。

 「納得のいくロゴづくりには何度も足を運び、情報を聞き出す作業が欠かせない」と西村さん。依頼主のこだわりや熱意を聞き、自分なりに図案に落とし込む。

 「視覚に訴える」ことを意識し、「依頼主の要望を聞くうちに輪郭ができて、細かい部分に自分が『良い』と感じたことをちりばめる」という。

 どうすれば売り手の思いが買い手に伝わるか。とことんまで考え抜く。まちのトータルプロデューサーの仕事の極意が垣間見えた。

【にしむら・ふとし】1971年、新温泉町生まれ。浜坂高校を経て梅田ビジネス専門学校(大阪市)を卒業。大阪市内のアパレル商社に約5年勤め、阪神・淡路大震災などを機に但馬にUターン。土産菓子メーカーや発酵食品会社などを経て2014年に企画制作会社「エフ・エー・プロデュース」を設立。「『自遊』な発想でトータルプロデュース」を理念としてウェブデザインやイベント企画、地元生産者の支援などを幅広く手掛ける。

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