豊岡市に昨年移住した劇作家平田オリザさん主宰の劇団「青年団」の拠点となる「江原河畔(えばらかはん)劇場」(同市日高町日置)で28、29日、地元住民らへのお披露目とするプレオープン公演が行われる。コロナウイルス感染拡大によるイベント自粛が続く中、客席の間隔を広げるなど対策を行う。平田さんは「劇場は公共性が高く、できるだけ扉を閉ざしてはいけないと判断した」と話している。(石川 翠)
劇場は旧豊岡市商工会館の建物で、木造2階建て延べ約930平方メートル。レトロな外観はほぼそのまま残し、内観を大幅に改修した。1階に約150人収容の劇場(約230平方メートル)と楽屋、ロビーがある。劇場の客席を階段状にするため、1階の天井を1メートル上げて高さ約4・3メートルに改修。稽古場とする2階は現在も改修中で、今後は地元住民も参加し、劇団員が床張りなどを行う。本格オープンは4月29日。
プレオープン公演は青年団の定番演目「隣にいても一人」。ある日目覚めるとなぜか夫婦になっていた2人を通して夫婦とは何かを考えるコメディー調のストーリーで、「カフカの『変身』のパロディーのような、親しんでもらいやすく少し不思議な感覚の作品」という。
また、インターネットで募るクラウドファンディングを実施中。機材を購入するほか、高校生以下の観劇料を無償にして、児童劇団も創設する。3月30日までに4千万円を超えれば若手演劇人の育成機関を創設し、5千万円を達成すれば劇場に円山川を一望できるウッドデッキを増設することを目標にしている。
本格オープン以降は1年間で新作を含む11演目を予定。今後は他の劇団の公演もあるという。平田さんは「将来的には毎日演劇などを上演し、観光で気軽に立ち寄ってもらえるような劇場にしたい」と話す。
プレオープン公演では、感染症対策として換気や手すりなどを消毒するほか、座席数を減らして間隔を空け、来場者の連絡先把握などを行う。地元住民が予定していたイベントも縮小して行われる予定。
イベント自粛が続く中での公演実施について平田さんは「市内で感染者が出た場合は再度検討する」としながらも「命の次に大事なものは、演劇や音楽、スポーツ、子どもとの触れ合いなど、人それぞれ。ストレスフルな社会で、それぞれの大事にしていることに寛容になることが大切だと考えている」と話した。
【2020年3月24日掲載】









