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「豊劇」最後の通常営業日 熱心なファン市内外から続々、名残惜しみ「再開後もこれまで通りに…」

2022/08/31 05:30

 「豊劇」として親しまれた映画館「豊岡劇場」(兵庫県豊岡市)が30日、通常営業としての最後の上映を終えた。事前予約した人向けの上映会を開く31日を挟んで、9月1日から休館する。一般社団法人が運営を引き継ぎ、来春までの再開を目指す。この日は52人のファンらが訪れ、早期の再開を楽しみに待つ声にあふれた。(丸山桃奈、石川 翠)

 豊劇は2012年にいったん休館した後、不動産会社の石橋設計(同市)を率いる石橋秀彦代表(53)が、14年12月末から運営を引き継いだ経緯がある。前回の再開から7年8カ月の間で659本を上映し、延べ8万8千584人が鑑賞した。

 最後の上映は、英国のパンクバンド「ザ・ポーグズ」のボーカルの音楽人生を描いたドキュメンタリー映画「シェイン 世界が愛する厄介者のうた」。石橋代表が選んだ作品だ。

 午後5時、鑑賞を終えた最後の来館者が大ホールから出てきた。石橋代表は「豊劇は人生の一部で、見に来てくれた方にとっては生活の一部だった。今まで作品を見てくれた方々の生活にどう反映されていくのかが楽しみ」と述べた。

 豊劇は、新型コロナウイルス禍などによる収益ダウンを補うため、21年秋に映画のインターネット配信を始めたが、9月末で終了するという。

 朝から3本を鑑賞した女性(58)は「休館の知らせを聞いた時は、立ち直れないかもしれないと思ったほどショックだった」と惜しむ。

 自宅で大手動画配信サービスの映画を見ていたが、4年前に久しぶりに同館で鑑賞し、「広々とした館内で作品に没頭できる感覚がいい」と改めて実感。その後、仕事の休みを調整しながら週に2、3回は訪れるようになった。冬場に登場するこたつ席も好きだったという。「また配信サービスに戻るしかないかな。難しいかもしれないけど、再開後もこれまで通りに続けば」と話した。

 京都府から来た30代男性は「休館は驚いたけれど、新たな豊劇を迎えるにあたっての分岐点にすぎない。再開が楽しみ」と語った。

 同県神河町から駆け付けた豊岡市出身の男性(59)は「幼いころから通っていて、親になってからも子どもとアニメを見に来るなど、長い間お世話になった」と感慨深げ。「以前は冬になると、ダウンジャケットを着て見ていたくらい外の気温と同じくらい寒かったけど、今は空調も整備されて快適に見ることができていたのでとても残念」と語った。

 最後に石橋代表らは観客らと記念写真を撮り、拍手で見送られた。写真は劇場に飾る予定という。

■休館中もイベント開催

 豊岡劇場では、9月1日以降の休館中もイベントなどが開催される。同月10日は豊劇の休館をテーマに、但馬地域の未来を考えるワークショップを開く。午後2時から。無料。先着20人。申し込みなどは生きがいしごとサポートセンター阪神北TEL0797・87・4350

 同月23日には、ドキュメンタリー映画「アートなんかいらない!」の上映会が午後1時半から開かれる。山岡信貴監督と、出演者の藤野一夫・芸術文化観光専門職大学教授、バレエダンサーの木田真理子さんによるゲストトークもある。一般1500円、大学生以下千円(3歳未満無料)。映画は2部構成で、それぞれチケットが必要。問い合わせは豊劇TEL0796・34・6256

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