兵庫県豊岡市小島の家具工房「アウゲ」が、同市但東町中山のちりめん工房に眠っていた絹の帯地を再利用して、背もたれのない椅子を作った。座面に張った帯地の花柄が際立ち、一つ一つのデザインが異なる一点物だ。帯地を使った椅子は珍しいといい、販売なども視野に入れ、豊岡の新たな特産品を目指す。(丸山桃奈)
帯地を提供するのは、2010年に開業した「シルク天然工房」。橋本文俊代表(72)によると、工房には西陣織でできた帯地の柄見本が1万本以上使われないまま残っていたという。その状況を聞いた知人の西賀真紀さん(44)が、知り合いだったアウゲの草分みのる代表(68)に相談を持ち掛けた。橋本代表は「柄見本は貴重品で、二度とその柄を生成できないが、残っていても仕方がない」と再利用を決意した。
「価値をよみがえらせたい」。今年8月末に西賀さんが帯地約10枚をアウゲに持ち込み、草分代表が再利用を快諾した。当初はベビーチェアを作ろうとしたが、使用期間が限られる。そこで年代を問わず、息長く使える背もたれのない椅子を作ることにした。
但馬産のシイの木を使用し、1脚ずつ手作業で製作した。形状を六角形にして複数をハチの巣状に束ねても使えるようにし、座面に大小さまざまな金、ピンクなどの花や模様がちりばめられた帯地を張った。着脱ができる座面の下は収納スペースに。側面はのみで横線の模様を付け、高さは30~40センチを用意した。
椅子の製作を続けつつ、それでも帯地が余れば、額やアクセサリーなども手がける予定という。
草分代表は「たくさんの椅子を組み合わせると、より目立ってきれい」といい、「市のマスコットキャラクター玄さんも六角形。城崎や玄武洞に置いて、観光客らの反応を確かめたい」と思いを巡らせる。橋本代表は「椅子と組み合わせる発想がいい。よりええものに生まれ変わった」と話していた。
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