限定復刻された伊津師乙女茶を手にする森垣利明さん(左)と岡田圭輔さん=豊岡市出石町
限定復刻された伊津師乙女茶を手にする森垣利明さん(左)と岡田圭輔さん=豊岡市出石町

 兵庫県豊岡市出石町の特産品で知られた銘茶が今夏、約30年ぶりに復活した。1970~90年代にかけて栽培され、担い手不足で商業生産を終えたが、同町松枝で理髪店を営む森垣利明さん(74)が、荒れた茶畑を引き継いだのを機に管理を再開。有志らの手を借りながら、昔懐かしい手摘みの味の継承を目指す。(阿部江利)

 同町では1970年代後半、稲作からの転作の一環で茶の栽培が始まり、「出石乙女」の銘柄で品評会にも出されていた。森垣さんらによると、同町にも2000年代初めまで茶生産組合や加工施設があり、約6トンを製茶した記録も残るが、高齢化などで実質的な生産は途絶えたという。

 森垣さんは約25年前、親族から茶畑を継承した。長く自家消費のための茶を栽培するだけだったが、同市内でゲストハウスを営み、茶に関心を持っていた岡田圭輔さん(47)らと知り合ったのを機に、21年から特産茶の復活を目指すプロジェクトがスタート。森垣さんは、荒れ放題だった畑や木の一本一本を、仕事の合間に時間をつくっては手作業でこつこつと整備し、周辺に点在する茶畑と合わせて約7反(70アール)の管理を続けてきたという。