イスラエル軍とイスラム組織ハマスの戦闘が続くパレスチナ自治区ガザでは、イスラエル軍によるガザ境界封鎖に伴い、外国人ジャーナリストが直接取材できない状況が続く。国際社会はガザ在住のパレスチナ人ジャーナリストらの活動で現地情勢を知ることしかできない。そんな中、貴重な記録が2024年、日本語に翻訳された。『ガザ日記-ジェノサイドの記録』(地平社、中野真紀子訳)。著者はガザ出身のパレスチナ人作家で、パレスチナ自治政府前文化相のアテフ・アブサイフ氏(ヨルダン川西岸ラマラ在住)だ。戦闘開始時の2023年10月7日、ガザで開催予定だった文化イベント参加のため偶然、故郷を訪れており、戦渦に巻き込まれた。ガザ滞在は2023年末まで約3カ月間続き、その間の日記が本書だ。「空爆のたびに、がれきや残骸、砲弾片とともに記憶が飛び散り、歴史が消されていく」。アブサイフ氏にガザでの体験とイスラエル軍に破壊されたガザの文化遺産について聞いた。(共同通信・前エルサレム支局長 平野雄吾)