中国電力が原発の使用済み核燃料の中間貯蔵施設建設に向け、山口県上関(かみのせき)町の同社所有地で、ボーリングなどの調査を実施したいと同町に申し入れた。同町議会はきのう臨時議会を開き、西哲夫町長が調査を受け入れると表明した。

 東京電力などが出資する施設が青森県むつ市にあり、実現すれば全国で2例目になる。だが建設には住民の理解が大前提となる。申し入れから2週間ほどで、地元向けの説明会も開かれていない中での容認は、拙速と言わざるを得ない。

 上関町は1982年に原発の誘致を表明した。2009年に準備工事が始まった後、11年の東電福島第1原発事故の影響で工事が中断し、住民の反対運動もあり再開できない状態となっていた。そのため町側が代替の地域振興策を求めていた。

 同町の試算では、中間貯蔵施設の誘致による交付金は、立地調査から50年間の操業期間終了までの合計で約360億円に上る。西町長は「建設と調査は別」と述べたが、調査自体が地域の将来に関わる問題だ。議論を尽くさないまま出した判断は、住民の分断を広げかねない。

 施設は中国電と関西電力が共同で開発を目指す。国内最多の原発6基を稼働させる関電は、原発内の使用済み核燃料プールが今後5~7年で満杯となる。関電は、原発が立地する福井県に対し、中間貯蔵の県外候補地を今年末までに示すと約束している。できなければ、一部原発の運転を停止しなければならない。

 中国電との共同開発は、関電にとってまさに「渡りに船」だろう。ただ、むつ市の施設への搬入を模索して同市に拒絶された経緯もある。他地域の燃料受け入れに地元の同意が得られるかは見通せない。

 中間貯蔵では、一般的に燃料を金属容器に入れて自然冷却する。プールでの保管より安全性が高いとされるものの、地震や津波など災害への対応なども含め、住民への説明が欠かせない。中国電と関電は丁寧に疑問に答える責任がある。

 中間貯蔵施設は国の核燃料サイクル政策の中で位置付けられている。ところが使用済み核燃料の再処理工場は完成延期を繰り返し、再処理したMOX燃料を使うプルサーマル発電も拡大していない。最後に残る高レベル放射性廃棄物の処分場候補地も未決定だ。核燃サイクルは事実上破綻しており、中間貯蔵のはずが最終処分場になりかねない。

 原発内にたまる大量の使用済み核燃料の安全な保管と処分の問題からは逃げられないとしても、生じる量を減らすのが先決である。政府は現実を直視し、脱原発依存の政策にかじを切るべきだ。