地価上昇の波が大都市から地方にも広がり始めた。

 国土交通省が発表した7月1日時点の都道府県地価(基準地価)は、東京、大阪、名古屋の三大都市圏を除く地方圏の住宅地で前年比0・1%上昇となり、31年ぶりのプラスとなった。商業地は0・5%増と4年ぶりに値上がりした。兵庫県平均も住宅地は0・6%増と15年ぶりに値上がりし、商業地は1・7%増と前年より上昇幅が拡大した。全国平均は住宅地、商業地でそれぞれ0・7%、1・5%上昇した。

 新型コロナウイルスの「5類」移行で社会経済活動が元に戻った上、低金利で不動産融資を受けやすくなった点も地価を押し上げた。ただ全国に2万ある調査地点のうち、半数は地価がコロナ禍前を下回ったままだ。同じ地域内でも格差が開き始めている点に留意する必要がある。

 地方の地価上昇の一因に、海外との関連がうかがえる。

 台湾の半導体大手企業が隣町に進出する熊本県大津町は、工場建設や住宅整備で土地の引き合いが多く、上昇率が全国一となった。世界文化遺産・国宝姫路城(姫路市)の周辺や、歴史的建造物が多い岐阜県高山市などは、訪日客の回復を当て込み店舗物件の需要が伸びた。

 人口流入や観光関連産業の売り上げ増など、地域全体の活性化を見越した地価上昇といえる。

 一方で、人口減にあえぐ自治体でも、場所によっては地価は上昇基調にある。交通が便利で商業施設が集まる中心部に新しいマンションや一戸建てが立ち並ぶ光景は、兵庫県内を含め全国に見受けられる。

 こうした地価上昇は、必ずしもプラスとは言い切れない。郊外や中山間地から、暮らしやすい中心部に人口が流出した可能性が高いからだ。空き家の増加や自治会役員のなり手不足などの問題に拍車がかかる。均衡の取れたまちづくりを、行政も住民も模索するべきだろう。

 東京23区では新築分譲マンションの平均価格が1億円を超えた。実際に住むための需要に加え、内外の投機資金が流れ込み、価格を押し上げている。日銀の大規模金融緩和も市場に資金をだぶつかせた。

 米国や欧州の金融緩和路線転換で日銀も政策修正を迫られるとの見方が強まり、長期金利は上昇傾向にある。金利上昇で資金の流れが鈍れば首都圏の地価が下落に転じ、地方にも波及しかねない。地価下落が深刻な不況をもたらしたバブル崩壊を思い起こし、動向を注視したい。