神戸港の新港第2突堤(神戸市中央区)で、来春開業を目指し多目的アリーナの建設が進んでいる。バスケットボールBリーグ2部所属「神戸ストークス」の本拠地となるほか、音楽イベントや国際会議などにも対応する「民設民営」の施設だ。ウオーターフロント再開発の核として期待は大きい。
収容人数は1万人で、敷地面積は約2万3700平方メートルとなる。アリーナ内には飲食しながら観戦できるVIPフロアが設けられる。周辺の緑地にカフェテラス、展望エリアを開設し、海辺に近い利点を生かした日常的ににぎわう施設を目指す。
阪神・淡路大震災で甚大な被害を受けた神戸市は、復興が重荷となり、大阪などとの都市間競争に後れを取った。人口が150万人を割る中、市は都心・三宮と沿岸部で大規模再開発を本格化させている。集客力があるアリーナが回遊性を高める役割を果たせるかが注目される。
近年、全国各地でアリーナやスタジアムの整備計画が相次いでいる。スポーツを成長産業と位置付ける国も、地域活性化の起爆剤として後押しする。
欧米ではスポーツ施設が公園やショッピングモール、ホテルなどと一体的に開発され、地域住民だけでなく世界中から観光客を集める。一方、日本では各種スポーツを「する」ための体育館として整備され、イベントなど「観(み)る」ことを重視した民間主体の大型施設は少ない。
先進事例が開業1年を迎えたプロ野球日本ハムの本拠地「エスコンフィールド北海道」を核とする施設だ。人口5万7千人の北広島市に350万人が訪れたといい、試算では市への経済効果は年間523億円、道内全体では1114億円に上る。
32ヘクタールに及ぶ広大な敷地には病院や大学も開設予定で、JRの駅もできる。周辺を巻き込んで街を活性化させるスタジアムやアリーナの可能性に自治体も期待を寄せるが、地域によっては採算性を疑問視する声もある。
神戸でも経済効果を広範囲に波及させるには、地域や民間との連携を深める必要がある。市民が観戦に足を運びやすくすることで、スポーツ人口の裾野拡大や競技レベルの将来的な向上にもつなげていきたい。