パレスチナ自治区ガザでのイスラエル軍とイスラム組織ハマスの戦闘開始から半年が経過した。ガザ市民の人道危機はますます深刻化し、中東の広範囲に戦火が拡大する懸念も強まっている。国際社会は危機回避の正念場と認識し、一日も早い停戦を実現させねばならない。
今月1日、シリアの首都ダマスカスにあるイラン大使館領事部の建物が空爆され、革命防衛隊の精鋭部隊の司令官ら13人が死亡した。イランはイスラエルの攻撃であると非難し、報復を宣言した。
イランは、レバノンを拠点にイスラエルを越境攻撃する民兵組織ヒズボラや、ガザで戦うハマスを支援している。公館への空爆はこうした動きへの警告とみられる。
しかし、外交施設への攻撃は国際法や条約で禁じられている。非難に値する行為だが、イランがイスラエルへの直接攻撃に踏み切れば、後ろ盾の米国などの介入で紛争に発展し、戦火が拡大しかねない。
中東では米軍と親イラン武装組織間の攻撃も続いており、これ以上緊張を高めてはならない。関係各国には冷静な対応を強く求めたい。
そもそも中東情勢が緊迫しているのはガザ危機の長期化が要因だ。
激しい空爆と地上部隊の侵攻により、ガザ市民の死者は3万3千人を超えた。病院や食料支援に当たるNPOなどへの攻撃も相次ぎ、飢餓が広がっている。イスラエル軍はさらに最南部ラファへの地上侵攻を計画する。避難民ら約150万人が密集する同地で地上戦が始まれば、おびただしい流血は避けられまい。
国連安全保障理事会は先月、即時停戦を求める決議案を初めて採択した。同様の決議案にことごとく拒否権を行使してきた米国もこの時は棄権した。ガザ侵攻を当初支持していた欧州連合(EU)もラファ侵攻には強く反対する。イスラエルは国際社会で孤立しつつあることを自覚するべきだ。
継続的な停戦へ、鍵を握るのは米国の行動だ。ガザ侵攻は米国の軍事支援で成り立っており、バイデン政権は強い態度で臨む必要がある。ハマスせん滅を掲げるイスラエルを支持する強硬姿勢を捨て、停戦交渉を中立的な第三者に委ねるなど思い切った方針転換が欠かせない。
ハマス側も、イスラエルへの越境攻撃が人道危機を招いた事態を重く受け止めるべきだ。市民の保護を最優先に解決策を探り、人質の早期解放も目指してもらいたい。
中東、イスラエルともに良好な関係を維持してきた日本の役割も重要さを増す。「2国家共存」の実現に向け、国際社会との連携を一層強めることが肝要だ。