台湾で3日朝に発生した大地震で、これまでに確認された死者は10人を超え、負傷者は1100人余りに上る。発災から1週間となる今も行方が分からない人がいる。台湾政府は一刻も早い救出と支援に全力を挙げてほしい。
台湾東部沖を震源とし、日本の気象庁によると、マグニチュード(M)は7・7と推定される。震度6強と最大の揺れが襲った花蓮(かれん)では市街地で建物が倒壊、山間部では土砂崩れや落石などが相次ぎ、道路が寸断された。花蓮県の有名観光地「太魯閣(タロコ)国立公園」では、外国人観光客を含む約700人が一時孤立状態になるなどした。
台湾は、日本と同様に地震の多発地帯である。今回の地震は死者2400人以上、負傷者約1万人を出した1999年の台湾大地震以来の規模となるという。99年以降、建築物の耐震基準見直しなど対策は強化されたが、古い建物も多数残っているといい、被害の拡大につながった可能性もある。
専門家によると、台湾周辺の地下は東のフィリピン海プレートと西のユーラシアプレートがねじれるように沈み込む複雑な構造をしている。過去100年間にM7級の大地震が10回以上起きており、今後も警戒が必要だ。台湾の当局は防災対策を抜本的に強化してもらいたい。
日本と台湾は正式な外交関係はないが、過去の地震発生時には互いに支え合ってきた。
99年の台湾大地震では、日本政府がいち早く救助隊を派遣したほか、阪神・淡路大震災の経験を生かした災害医療のノウハウや仮設住宅を提供するなどした。2011年の東日本大震災では、国・地域別で最大規模となる200億円以上の義援金が台湾から寄せられ、被災者を励ました。今年1月の能登半島地震でも台湾政府が民間に呼びかけ、25億円以上の義援金が集まったという。
今度は日本が恩返しをする番だ。岸田文雄首相は「隣人である台湾の困難に際し、必要な支援を行う用意がある」と表明した。各地で募金活動が繰り広げられている。今後の復興を含め、教訓を生かした支援を通じ台湾との絆を一層深めたい。
今回の地震では、沖縄本島や八重山諸島に一時津波警報が出され、与那国島などで最大30センチの津波を観測した。能登半島地震の津波が頭をよぎった人もいるだろう。被害はなかったが、高台への避難に際し交通渋滞が発生するなど混乱もみられた。今後の対策に生かす必要がある。
最近、各地で地震の発生が相次いでいる。家具の転倒防止や備蓄の点検、避難経路の確認など、足元の備えをいま一度見直す機会としたい。