自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を受け、衆参両院に設置された政治改革特別委員会での議論が本格化する。

 国民の信頼を取り戻すには、政治資金の透明化と、罰則を強化する抜本的な制度改革が不可欠だ。中途半端な結果に終われば、政治不信を増幅しかねない。与野党は今国会で政治資金規正法改正を実現するために議論を深めてもらいたい。

 組織的、継続的な裏金づくりを許した現行法は抜け穴だらけで「ザル法」とも呼ばれる。特別委では、パーティー券購入者の名前や額を公表する基準の厳格化、会計責任者だけでなく議員本人も責任を負う「連座制」の導入などが焦点となる。

 野党各党や公明党が早々に改正案を示す中、裏金事件の当事者である自民は23日にようやく独自案を公表した。深刻な政治不信を招いた反省が足りないと言わざるを得ない。

 自民案では、政治資金収支報告書の提出時に国会議員による「確認書」の作成を義務付け、不記載や虚偽記入などに対する監督責任を明記した。不記載の相当額を没収し、国に納付させる規定も設ける。

 ただ議員が刑罰を科され公民権停止となるまでのハードルは高い。会計責任者が不記載や虚偽記載で処罰され、議員が必要事項を点検せず確認書を交付した場合に限る。対象を国会議員が代表を務める政治団体としているのも「抜け道」になりかねない。裏金事件を例に取ると安倍派(清和政策研究会)は「その他の政治団体」で対象外だ。踏み込みが甘く、これで厳罰化と言えるのか。

 公明は連座制導入やパーティー券購入者の公開基準引き下げ、政策活動費の使途公開の義務化など厳しい案を示す。自民は公開基準引き下げや政策活動費については具体案を出していない。透明化や厳罰化に後ろ向きでは政治への信頼回復はますます遠のく。与党は合意を大型連休後に持ち越したが、公明は妥協せずに厳しい姿勢で協議に臨むべきだ。

 野党各党は企業・団体献金の禁止や政策活動費の廃止、調査研究広報滞在費(旧文書通信交通滞在費)の使途公開なども求めている。自民は慎重姿勢を崩していないが、抜本改革には野党案をすべて受け入れるくらいの覚悟が要る。

 特別委では裏金事件の実態解明にも取り組む必要がある。裏金化の経緯、使途などの疑問は何ら解消しておらず、国会の政治倫理審査会でも安倍派幹部らが「知らぬ存ぜぬ」を貫いた。虚偽答弁に偽証罪が適用される証人喚問が欠かせない。

 岸田文雄首相は政治生命を賭して、事件の真相究明と再発防止に向けた法整備を主導せねばならない。