北陸新幹線が3月、金沢から敦賀(福井県)まで延伸された。JR西日本によると、金沢-福井間の開業1カ月間の利用客数は72万人で、新型コロナウイルス禍前の在来線の数字を1割強上回り、順調な滑り出しだ。
5月7日からは、石川県内の宿泊代金が最大半額になる「北陸応援割」の第2弾が始まる。新幹線で多くの人が訪れ、能登半島地震の被災地復興の一助になってほしい。
一方で、国の整備計画が示す大阪までの延伸は、環境影響評価(アセスメント)の遅れなどから着工時期が見通せない。
新幹線の建設費は巨額に上り、沿線自治体も拠出を求められる。関西広域連合や経済団体は早期延伸を要望するが、負担に見合う経済効果が得られるか、慎重な検討を求めたい。
延伸ルートは2017年に与党が決定した。敦賀から福井県小浜市を経由して京都駅に南下し、新大阪駅に至る。ルートの詳細や途中駅の位置などは決まっていない。
国土交通省は17年、建設費は2・1兆円で、完成に伴う便益(効果)は建設費を1割上回ると試算した。だがその後の資材高騰などの影響を加味すれば、実際の建設費は4兆円を超えるとの見方もある。
金沢-敦賀間の延伸では、12年の着工認可の段階で9千億円弱と想定していた建設費が最終的に1・7兆円弱まで膨れ上がった。大阪への延伸も経済情勢などを踏まえ、事業費や効果を精査し直すべきだ。
京都府内では環境への影響を懸念する住民から新幹線延伸に反対の声が上がり、アセスメントの遅れにつながった。福岡と長崎を結ぶ西九州新幹線では、負担に見合う利点がないとして佐賀県が建設に反発し、一部区間の開業にとどまっている。
整備新幹線ができると、地域住民の足となる在来線はJRから経営分離され、地元県市などによる第三セクターに移管される。今回の敦賀延伸も移管区間の赤字が確実視され、運賃値上げなどの影響が懸念される。
人口が減少し経済成長率が鈍る中、新幹線は以前のように地方再生の切り札とは言えなくなっている。そのことを改めて認識する必要がある。