きょうは労働者の日「メーデー」である。兵庫県内でも労働組合が集会やデモを予定している。
物価高騰に賃金の上昇が追い付かず、家計は厳しい。2月の時点で実質賃金は23カ月連続で前年同月を下回った。これだけマイナスが続くのは2008年のリーマン・ショックによる景気低迷期以来である。
暮らしの安心には、持続的な賃上げが必要だ。「人への投資」をさらに引き出すために、働く者の権利を再確認し、連帯や団結する意義を広く共有したい。
連合兵庫は、メーデーに先立つ4月27日、神戸市内で中央大会を開いた。労組のメンバーが登壇し、慢性的な人手不足で長時間労働の改善が進まない現場の状況を報告した。
郵便の配達業務に携わる日本郵政グループ労組の男性は「賃金が低いため、結婚や子どもを持つことをあきらめる同僚がいる。『組合費の負担が重い』との理由で労組に入ってもらえない」と訴えた。
雇用者のうち労組に入っている人の割合は減り続けている。同様の危機意識を持つ組合は多いはずだ。
24年春闘は、交渉の中心が大企業から中小企業へ移り、現在も続いている。大手の賃上げが、地域経済を支える中小企業にどれだけ波及するかが焦点である。
岸田文雄首相は、物価上昇を上回る所得の実現を最重要項目の一つに掲げる。経済界に賃上げを強く促すなど、昨年に続き今年も「官製春闘」の色合いが強くなった。そうした経緯もあり、大企業では労働組合の要求に対して満額やそれ以上の回答が相次いだ。
大手を中心とした高水準の賃上げは、歓迎すべき動きと言える。しかし、懸念もある。今春闘で自社労組に満額回答を示した大手自動車メーカーの中には、下請けへの代金を不当に減額していた例があった。
「下請けいじめ」は、取引先である中小企業の賃上げを阻害する。大企業は、コスト増を下請けに押しつける不公正な商習慣を改め、取引価格の適正化に積極的に応じるべきだ。大手企業の労組も、そうした視点を持つ必要がある。
長年、多くの企業はコスト削減を優先して人件費を抑えた。対する労組は、賃上げよりも労使協調路線で雇用維持を重視してきた。不況時の大量解雇は抑制できたが、労組の存在感を弱めた側面は否めない。
欧米では物価上昇を受けて、昨年からストライキが頻発している。国内でも労働者の権利であるストを再評価する動きが見られる。労組は多様な働き手の声を活動に反映させ、経営者と対等な立場で話し合うための交渉力を磨いてほしい。