東アジアで初となる世界パラ陸上競技選手権大会がきょう、神戸市須磨区のユニバー記念競技場で開幕する。104カ国・地域の合わせて1073人が参加し、25日までの9日間、世界トップレベルのパラスポーツが繰り広げられる。地元の私たちには競技を間近で見る貴重な機会となる。神戸に集う選手らに熱い声援を送り、大会を盛り上げたい。

 大会では171種目が行われる。短距離、中・長距離、跳躍、投てきの各競技は、視覚障害、知的障害、脳性まひ、機能障害など障害の種類と程度で分かれ、アルファベットと数字の組み合わせで表される。

 このクラス分けは、できるだけ平等に競うために考えられた制度だ。自らの能力を極限まで追求する選手の姿、そして競技の特性に合わせて進化した用具とそれを駆使するスピードや力強さが見どころとなろう。

 今回の神戸大会は、今夏のパリ・パラリンピックの代表最終選考会を兼ねている。前哨戦に臨む選手たちは、日々積み重ねてきた練習の成果を存分に発揮してほしい。

 注目されるアスリートの一人が、男子走り幅跳び(義足・機能障害T64)に出場するドイツのマルクス・レーム選手だ。8メートル72の世界記録は健常者の世界記録と23センチの差しかない。人類初の「9メートル超え」を目の当たりにできる可能性がある。

 日本代表には、2021年東京パラリンピックで400メートル、1500メートル2冠の佐藤友祈選手(車いすT52)ら過去最多の66人が名を連ねる。兵庫県出身者は、男子円盤投げ(脳性まひF37)の新保大和選手、男子走り幅跳び(上肢障害T47)の芦田創選手、男子やり投げ(視覚障害F12)の政成晴輝選手、女子100メートル(脳性まひT34=車いす使用)の北浦春香選手の4人で、メダルの獲得を含めて活躍が期待される。

 パラ陸上は1994年にドイツ・ベルリンで第1回大会が開催され、第11回の神戸大会は2021年の予定だった。新型コロナウイルスの感染拡大で2度の延期を余儀なくされたが、東京パラリンピックとは異なり、有観客で実施される。選手らはスタンドからの生の応援を楽しみにしているという。世界各国の選手同士はもちろん、選手と観客、市民との交流の輪が広がるに違いない。

 ユニバー記念競技場や各宿泊施設などでは、障害のある選手たちを迎え入れる準備を進めた。改善のための工夫は、誰にとっても優しく、住みやすいまちづくりにつながる。

 神戸大会の理念の一つは「インクルーシブな(分け隔てのない、包摂的な)社会の実現」である。共生社会に近づいていく一歩として、この大会をぜひ成功させたい。