104カ国・地域の選手1073人がエントリーし、神戸市須磨区のユニバー記念競技場で開催された東アジア初の世界パラ陸上競技選手権大会が、9日間の日程を終えて閉幕した。

 トラック競技、フィールド競技の計168種目が行われ、世界から集まったパラアスリートが熱戦を展開した。残された機能を最大限に生かし、競技に挑む選手の姿は、多くの人たちに感動と興奮を与えた。

 男子走り幅跳び(義足・機能障害T64)で、世界記録保持者のマルクス・レーム選手(ドイツ)が8メートル30で大会7連覇を果たすなど、最高レベルの競技が観客を魅了した。いくつもの世界記録が塗り替えられた。

 日本代表は66人が出場した。男子400メートル(車いすT52)に出場した東京パラリンピック王者の佐藤友祈(ともき)選手は、開幕直前に競技用車いすが壊れるアクシデントを乗り越え、銀メダルを獲得した。全力を出し切った選手たちに拍手を送りたい。

 多くの人が観戦したほか、兵庫県内の小中学校と高校、特別支援学校の児童生徒約3万人が招待された。人間の可能性を示すパラ競技の素晴らしさが子どもたちに伝わったに違いない。

 大会では三つの基本理念を掲げた。東京パラを継承し、パラスポーツの振興を図る「つなげる」、国際親善を促進する「ひろげる」に関し、多くの活動があった。開会式に出た地元中学生は「スポーツを通じてつながれることを実感した」と話した。約1500人のボランティアや市民も交流の輪を広げた。

 三つ目の「すすめる」は、障害者をはじめ誰もが暮らしやすいまちづくりを進めるとの理念だ。これを形にするには今後の取り組みが重要となる。

 神戸では1989年にフェスピック(極東・南太平洋身体障害者スポーツ大会、現アジアパラ大会)が開かれ、障害者の競技が盛んになった。

 今大会を機に神戸がインクルーシブな(分け隔てのない、包摂的な)優しいまちになっていけば、かけがえのないレガシー(遺産)となろう。今夏にはパリでパラリンピックがあり、神戸に集った選手たちが再び躍動する。大会の理念をパリにつなぎ、共生社会を目指したい。