能登半島地震が発生してから5カ月となる。復旧が進まず避難生活の長期化が懸念される中、「災害関連死」が後を絶たない。救えたはずの命がなぜ失われたのか。被災地における高齢者の暮らしをどのように支えるのか。行政や福祉、医療機関が連携して原因を検証し、命を守る体制を強化する必要がある。
石川県は5月下旬、能登の地震で被災した珠洲(すず)、輪島両市と能登町で災害関連死として計30人が認定されたと発表した。地震による犠牲者は建物倒壊などによる直接死230人と合わせて260人に上る。
災害関連死は家屋倒壊や津波などの直接的な被害ではなく、避難生活による体調悪化や環境変化のストレスなどで亡くなり、災害が原因と認められたものを指す。認定されると災害弔慰金支給法に基づき、遺族に最大500万円が支給される。
被災した各市町では計100人以上の関連死の認定申請が出ている。被害が大きかった珠洲市は関連死の申請数を明らかにしておらず、実際はさらに多いとみられる。深刻な事態であり、関連死を食い止めることは最優先の課題だ。
地震の直撃を受けた奥能登地方は住民の半数近くを高齢者が占める。地域福祉を支えてきた高齢者施設も甚大な被害を受け、福祉避難所の開設は想定を大きく下回った。道路寸断による物資や人の支援遅れ、長引く停電や断水の中、高齢者らが過酷な避難生活を強いられた。
関連死が知られる契機となった29年前の阪神・淡路大震災など過去の災害の教訓が生かされたとは言い難い。「防ぎ得た死」をなくすには、過程と原因の検証が不可欠だ。
石川県は一部の人について死亡の経緯を明らかにした。避難所で新型コロナやインフルエンザに感染後に亡くなったり、車中泊で持病が悪化したりするなど、心身への負担が命に関わる実態が明らかになった。
8年前の熊本地震では、関連死が直接死の4倍超に上り、70代以上が約8割を占めた。熊本県の調査では死亡時の生活環境が「避難所」よりも「自宅等」が圧倒的に多いことが分かり、支援の手が届きにくい在宅避難者への戸別訪問など対策の必要性を浮かび上がらせた。
国や自治体は、個人情報に配慮しつつ、可能な限り詳細を公表して社会全体で共有し、避難所の環境改善や医療・福祉支援の強化など、今後の備えに生かすべきだ。
今も避難者数は3千人を超え、長引く避難生活による疲労の蓄積が懸念される。心のケアも重要だ。生活再建の支援も加速しなければならない。一人でも多くの命を守るため、あらゆる手だてを尽くしたい。