米大リーグ、ドジャースの大谷翔平選手の元通訳で、違法スポーツ賭博で抱えた借金返済のために同選手の銀行口座から金を盗み、不正送金したとして銀行詐欺などの罪に問われた水原一平被告(39)が、カリフォルニア州内の連邦地裁に出廷し、罪を認めた。
連邦地検は水原被告の量刑が禁錮刑となった場合、刑期を終えた後に日本へ強制送還される可能性があると明らかにした。量刑の言い渡しは10月25日だが、米球界を揺るがした事件は一区切りがついた。
米大リーグ機構(MLB)は大谷選手について「詐欺の被害者とみなし、この問題は終結した」と説明した。関与の疑惑が払拭され、安心したファンも少なくないだろう。大谷選手は「事件に終止符を打ち、前に進む時期が来た」との声明を出した。さらなる活躍を期待したい。
違法賭博問題は3月に発覚、韓国での開幕シリーズ中にドジャースが水原被告を解雇した。連邦地検によると、2021年から今年にかけ、大谷選手の銀行口座から約1659万ドル(約26億円)を盗み、賭博の胴元側に送ったとされる。法廷で水原被告は「賭博で負債を抱えた」とし「(口座の金を盗むことが借金返済の)唯一の方法だった」と語った。
量刑は最長で禁錮33年となる。検察は司法取引に基づき刑の減軽を要請したものの、禁錮7~9年ほどになるとみられる。水原被告は重い刑事責任と向き合わねばならない。
一方、MLBはパドレスのマルカノ選手が野球賭博を行ったため、永久追放処分にしたと発表した。1989年には、名選手だったピート・ローズ氏が賭博関与で永久追放処分になるなど、米国では違法スポーツ賭博の問題が長年続いてきた。
ところが近年、スポーツ賭博の合法化の流れが進む。ドジャースが本拠を置くカリフォルニア州では違法だが、全米の中では少数派だ。オンラインの賭博も急成長しており、ギャンブル依存症(病的賭博)の温床になっていると指摘される。
日本でも、ギャンブル依存症の経験が疑われる人は300万人を超えるとの推計がある。違法なオンライン賭博についての各種相談も急増している。専門家は「依存症はやめたくてもやめられない病気で、誰でもなりうる」と警鐘を鳴らす。
そうした中、大阪ではカジノを含む統合型リゾート(IR)の計画が進む。適切な予防策がなければギャンブル依存が拡大しかねない。
国や自治体の依存症への対応は急務だ。借金に苦しんだり仕事や家族を失ったりする人が増えないよう、ギャンブルを巡る規制や啓発、患者支援などに力を入れる必要がある。