8月7日に西宮市の甲子園球場で開幕する第106回全国高校野球選手権大会で、一部の日程で試合を午前中と夕方に分ける「2部制」が初めて導入される。酷暑による熱中症対策の一つで、選手の命と健康を守る観点から歓迎したい。

 4月の大会運営委員会で導入が決まった。2部制を実施する第1日からの3日間は、いずれも1日3試合を予定する。

 第1日は開会式を昨年より30分早い午前8時半に始め、同10時から第1試合とする。終了後は暑い時間を避け、第2試合開始の午後4時までは空ける。第3試合は同6時半から始める。第1試合が同1時半で終了していない場合は継続試合とし、翌日以降に中断した場面から再開する。第2、3日は午前8時から第1、2試合を実施し、第3試合は午後5時から始める。

 夏の甲子園は気温35度を超える猛暑日でも試合がある。日本高野連は昨年から、試合の五回終了後に10分間の「クーリングタイム」を設け、水分補給などの対策を取るとともに、2部制の検討を進めてきた。

 過酷な条件下、強烈な日差しを浴びながらの全力プレーが、選手らにより深刻な事態を引き起こすリスクは無視できない。時代に合わせ、高校野球が変化していくのは当然だろう。

 今回の導入は課題を探るための試験的な意味合いも強い。

 今夏の大会は計3日の休養日を含め17日間の日程で実施されるが、計9日ある1日4試合の日への2部制導入は第4試合の終了が午後10時を過ぎる可能性があることから見送られた。

 3試合の日を増やそうにも、プロ野球のシーズン中に阪神タイガースの本拠地を使うため容易ではない。雨天順延などに対応する日程に余裕がなくなるのも気がかりだ。高校野球の「聖地」である甲子園で開催する意味は重いとはいえ、空調が効いたドーム球場の活用など抜本改革も議論すべき時期に来ているのではないか。

 日中に試合を避ける方式は少年野球の全国大会で2022年から試みられており、現場からも好評だという。日本高野連などは2部制導入による課題を検証し、選手の安全を最優先とする改善策を追求してほしい。