3月期決算企業の株主総会が連日開かれている。6月最終週に開催する企業が最も多く、兵庫県内の対象上場企業70社のうち、集中日の27日には23社が予定する。経営陣は総会を株主と直接対話する貴重な機会と捉え、厳しい声も真摯(しんし)に受け止めねばならない。

 近年、日本を代表する企業が自らの「看板」に傷を付ける事態が相次いでいる。大手自動車メーカーで発覚した、車の大量生産に必要な「型式指定」の認証を巡る不正がその代表例だ。

 ほかにも、コンプライアンス(法令順守)や地域貢献など社会的責任を果たしているか、消費者の信頼を損ねていないかなど、株主がチェックすべき経営課題は数多くある。

 総会の開催方法は、新型コロナウイルス禍を経て変化している。運営を支援する三井住友信託銀行によると、対象上場企業の8割が、パソコンやスマートフォンで議案への賛否を表明できるようになった。

 オンライン上で参加できる「バーチャル総会」も、会場と併用するハイブリッド型を含め2割の企業が採用する。コロナ禍では感染拡大防止を目的に導入されたが、遠方などを理由に会場に行けない株主とも対話できる有効な手段となっている。

 しかし実施する企業数は横ばいで、県内でも9社(13%)にとどまる。より多くの個人株主と接点を持てるよう、積極的に取り入れてほしい。

 取締役の選任や定款変更など通常は会社が提出する議案について、株主が自らの要求を盛り込んで出す「株主提案」を受ける企業が増え始めた。

 背景には、東京証券取引所が「資本コストや株価を意識した経営」を上場企業に促したことがある。より多くの利益を株主に還元したり、資産を有効に使って付加価値を高めたりするよう求める内容が多い。

 かつての「物言う株主」のように短期的な利益を求めるものばかりではなく、可決される例もあり、企業側も軽視できなくなっている。

 最も大切なのは経営者と株主が緊張感を保ち、建設的な議論を通じて企業価値の向上につなげることだ。株主総会の役割と重要性をいま一度確認したい。