身寄りのない高齢者が増え続け、最期を巡る対応が喫緊の課題となっている。人と人のつながりが希薄な「無縁社会」に進む中、行政や地域が連携し、独居でも安心して過ごせる仕組みをつくる必要がある。

 国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、65歳以上の1人暮らし世帯は、2020年の738万から30年には887万、さらに50年には1084万に増える。

 また、65歳以上で1人暮らしをする人のうち、婚姻歴のない割合は20年の男性34%、女性12%に対し、50年には男性60%、女性30%に急増すると見込む。子やきょうだいなどの近親者が全くいない人の大幅な増加も避けられない。

 誰にも看取(みと)られずに死亡する「孤独・孤立死」の増加も予想される。国は今年1~3月のデータを基に年間6・8万人と推計する。東京23区では15年以降の6年間で35%増えたとのデータもある。国は実態把握や本格的な推計を進める方針だ。

 明石市では19年、介護付き有料老人ホームの入居者が死後2週間も気付かれない問題が起きた。1人で暮らし続ける選択肢も尊重すべきだが、死後に長期間発見されない事態は看過できない。

 孤独・孤立死は、貧困や社会からの阻害感に基因する自殺が数を押し上げているとの指摘もある。独居の高齢者が住居を借りにくい要因ともなっており、早急な対策が必要だ。尊厳ある晩年を過ごせるよう、地域で見守る体制を整えたい。

 厚生労働省は、身寄りのない老後を支える新制度の検討を始めた。市町村や社会福祉協議会に窓口を設け、コーディネーターを置いて日常の困りごとや終活、死後の遺品整理などの相談に乗る。葬儀や納骨などの業者とつなぎ、契約手続きの支援も予定している。

 自治体独自の動きも出始めた。神戸市は、一定の収入のある高齢者を対象に「エンディングプラン・サポート事業」を準備している。葬儀や納骨の希望を示す張り紙やカードを作成し、電話や家庭訪問による安否把握も予定する。同市では引き取り手のない「無縁遺骨」が23年度、過去最高の634人に達し、10年前の1・6倍に上ったことも制度導入の契機となった。

 孤独・孤立対策推進法の施行を受け、政府は今月、NPOの活動支援や悩みを抱える人を支えるボランティア「つながりサポーター」の養成などを図る重点計画を策定した。血縁関係がなくても支え合う「有縁」の社会の再構築が不可欠になる。若年層が学校や職場以外に安心して過ごせる居場所をつくり、孤立を防ぐ取り組みも重ねるべきだ。