羽田空港の滑走路で1月、日航と海上保安庁の航空機が衝突、炎上し海保機の5人が死亡した事故を受け、国土交通省は関西や大阪(伊丹)を含む主要8空港でハード、ソフト両面の再発防止策を講じる中間とりまとめを公表した。有識者を交えた対策検討委員会の議論を踏まえ、海外の事例を幅広く取り入れた。
今後、最終まとめや運輸安全委員会の事故調査報告書を基にさらなる対策を進める。引き続き事故の原因や背景を詳細に洗い出し、再発防止の実効性を高めねばならない。
直接の事故原因は、海保機が離陸順1番を表す「ナンバーワン」の連絡を離陸許可と誤認し、滑走路に入ったことだ。さらに同機の進入に管制官、日航機とも気付かなかった。複合的な要因をどこかで断ち切る仕組みの構築が再発防止の鍵を握る。
機器面の対策の柱は「滑走路占有監視支援機能」の仕様変更だ。誤進入があった場合、管制官の卓上画面の色が変わるだけでなく、警告音が鳴るようにする。
また、滑走路に航空機がいる場合、航空灯火が点灯する「滑走路状態表示灯」を増強する。羽田では事故のあったC滑走路には未整備だった。着実に普及させる必要がある。
管制体制の強化も図る。管制官の業務は空港の監視やパイロットとの交信、システムの入力など多岐にわたるため、離着陸を調整する専属の担当を新たに配置する。
管制官の人員増にも乗り出す。国交省は当初、「現状で安全確保は可能」としていたが、中途退職などにより、6月時点で2031人の定員に対し113人の欠員が出ている。中長期の養成計画を策定するなど、今後の航空需要増も見据えた体制を築いてもらいたい。
見過ごせないのは、事故当事者の日航がこの1年、滑走路でのトラブルを繰り返していることだ。
昨年11月と今年2月、米国の2空港で誤進入と停止線越えを起こし、国交省による臨時の立ち入り検査を受けた。にもかかわらず、5月にも福岡空港で停止線越えのトラブルを起こし、再び検査を受けた。
特に福岡でのミスは、国が羽田事故を受けた緊急対策として打ち出した指示の復唱や確認を、パイロット、管制官双方が怠っていた。悲惨な事故の教訓を軽んじているというよりほかはない。
人為的ミス(ヒューマンエラー)を100%防ぐことは難しい。それゆえハード面を含めた防止策を何重にも張り巡らす必要がある。しかし心のゆるみがあれば、せっかくのチェック機能も効果を減じる。
事故の教訓をいま一度かみしめ、安全意識を高めなければならない。