障害者向けグループホームの大手運営会社「恵(めぐみ)」(東京)が利用者から食材費を過大に徴収するなどしたとして、愛知県などは同社のホーム5カ所の事業者指定を取り消すと発表した。厚生労働省も12都県にある同社の他のホーム99カ所に「連座制」を適用し、6年の指定期間満了後は運営できなくする。
不正は経営陣の指示で組織的に行われたと認め会社ごと業界から退場を命じた。全ホームの定員は1824人に上る。行き場を失う人が出ないよう、国や自治体は主体的に移転先や事業譲渡先を調整する必要がある。
厚労省などによると、食材費は実費徴収が決まりだが、恵では1人当たり月2万5千円を本社が集め、各ホームには約3分の1しか渡していなかった。全国の77カ所で約2億9900万円を中抜きし収益としていた。十分な食事が提供されず体重が減った利用者もいたという。
同社のホームは障害の重い人が中心に利用している。意思表示の難しさに付けこみ、サービスの質を意図的に下げる行為は悪質極まりない。「経済虐待」との批判も当然だ。
職員配置を水増し報告し、報酬を過大に得る手口も常態化していた。過大請求は愛知県だけで4億1千万円に上るという。障害福祉を食い物にしていたと言わざるを得ない。
かつて障害者が暮らす場所は施設や病院に偏っていたが、国際的な批判を受け、国は「地域移行」を進めてきた。地域の中で共同生活をするグループホームは、在宅への橋渡し的な場として国が設置を後押しし、ここ10年で利用者数は倍増した。
一方で、実績の乏しい事業者の増加で質の低下への懸念があった。行政の実地指導は追い付かず、指定時の研修もないなど監視の甘さが指摘されていた。
営利目的の企業に障害者の生活の質を丸投げした行政の責任は重い。厚労省は外部の目を入れようと、家族や地域住民でつくる会議の開催を義務付ける対策を打ち出したが、実効性は不透明だ。
障害福祉は誰のためにあるのか。その原点に立ち返って監視体制を強化するとともに、資質に欠ける業者を排除する仕組みを早急に整えるべきだ。