元日に発生した能登半島地震から半年になる。鉄道や道路などインフラの復旧は進むが、今なお約2500人が避難所に身を寄せる。ビニールハウスなどの自主避難所で暮らす人もいる。避難所生活はプライバシーの確保や環境・衛生面で限界がある。国や自治体は引き続き、被災者が安心して暮らせる住まいの提供を急がねばならない。
懸念するのは、避難生活などのストレスや体調悪化による「災害関連死」が増えていることだ。石川県によると、6月25日に開かれた3回目の審査会で計18人を認定するよう答申が出された。犠牲者の総数は直接死を含めて299人に上る見通しで、276人が亡くなった2016年の熊本地震を上回った。
梅雨が本格化し、暑さも厳しくなる中、熱中症の危険も高まる。関連死の申請と認定は今後も増える可能性がある。「防ぎ得た死」を繰り返さないよう、寄り添う支援を手厚く展開してほしい。
被災地では家屋解体の遅れが目立つ。石川県は25年10月までの公費解体の完了を目指すが、実現するかは見通せない。道路や上下水道の本格復旧の完了は28年度中という。土砂崩れで自宅での居住が禁じられる「長期避難世帯」も多く、他地域での再建を余儀なくされる人がいる。
先の見えない暮らしは長引きそうだ。国や自治体は被災者が希望を持てる復興への道筋を明確に示し、再生を後押ししてもらいたい。
石川県の復興計画では、地域の外から関わる「関係人口」の拡大や、集落単位で電気や水道を賄う自立・分散型インフラ整備、デジタル活用などを柱とし、32年度末までの9年計画で「創造的復興」を目指す。
過疎化や高齢化が深刻な能登で、どのように計画を具現化するのか。官と民、被災地と被災地外の垣根を越えて知恵を出し合い、協働する仕掛けが欠かせない。
被災市町も復興計画づくりを急いでいる。並行して、新たなまちの姿を集落や自治会で話し合い、住民の合意形成を図る必要がある。
29年前の阪神・淡路大震災では、発生2カ月で復興土地区画整理事業などが都市計画決定された。短期間の決定は被災者の猛反発を招いた。このため具体的なまちづくりは専門家の支援を受けつつ、住民主導で進められ、全国的に注目を集めた。
東日本大震災の復興事業でも行政主導で土地をかさ上げしたものの、完了まで長期間を要したことで、当初は帰還を望んだ住民が避難先から戻らない事例が多くみられた。
過去の災害の教訓に学び、生活再建と住民主体のまちづくりが着実に進むよう支援を強めるべきだ。