東京都知事選で現職の小池百合子氏が3選を果たした。候補者が50人を超える異例の選挙戦となったが、新型コロナウイルス対策など2期8年の都政運営と、子育て支援などの公約が一定の評価を集めた形だ。

 首都東京が直面する課題は多岐にわたる。とりわけ深刻なのが少子化の急速な進行だ。小池氏は保育所の待機児童削減や子どもへの一律現金給付などを実施してきたが、合計特殊出生率は0・99と全国最低水準にある。今回も保育料無償化の拡大などの公約を掲げ、他の候補も子育て支援を訴えたものの論戦が深まったとは言い難い。

 投票率は60・62%と前回より5・62ポイント上回る中、小池氏は得票を前回の約366万票から約291万票に減らした。批判に謙虚に耳を傾け、都民への丁寧な説明を尽くす姿勢を欠かさずに課題解決に取り組んでもらいたい。

 東京の施策は他の地方にも影響する。一極集中で地方の人口減に拍車がかかる一方、都の人口は1400万人に膨れ上がった。推計では4人に1人が2035年に65歳以上となり、地方からの介護人材の流出も懸念される。共存や連携の方策を示さねばならない。首都直下地震などへの備えも急務だ。

 選挙戦では、自民党が独自候補の擁立を見送った。裏金事件で逆風にさらされ、政治改革への消極姿勢でも厳しい批判を浴びたためで、公明党とともに小池氏支援に回った。4月の衆院補選以降、各地の地方選挙で負けが続く流れを食い止めたいとの思惑は明らかだった。

 ただ、小池氏は政党色を前面に出さない選挙戦略で臨み、結果的に奏功した。同日実施の都議補選では自民の獲得議席数が選挙前を下回り、退潮を脱したとは言えない。

 一方、「完全無所属」を掲げた前広島県安芸高田市長の石丸伸二氏は交流サイト(SNS)を駆使して若年層らへの浸透を図り、有権者の支持を広げた。立憲民主党と共産党の全面支援を受けた前参院議員の蓮舫氏は、石丸氏の後塵(こうじん)を拝した。

 与野党を問わず、各党は既成政党への不信を募らせる民意を真摯(しんし)に受け止めるべきだ。特に都市部に多い無党派層の動向は次の国政選挙を左右する要素にもなるだけに、態勢の立て直しを迫られよう。

 都知事選は公職選挙法の在り方を巡っても課題を残した。同じ政治団体が大量の候補者を立て、無関係なポスターが掲示板に張られた。掲示板の枠が足りなくなるなど、選挙の公平性確保にも懸念が生じた。

 与野党は、表現の自由に配慮しつつ、民主主義の根幹である公正な選挙を守る議論を急ぐ必要がある。