高校や大学の入試で、生理(月経)に伴う体調不良に配慮する動きが広がっている。

 月経痛などは個人差が大きく、現在もタブー視する風潮が根強い。そのため、つらくても我慢する人は少なくない。女性の健康問題として、生理についての社会の理解を深めるきっかけとしたい。

 兵庫県教育委員会は、今年2月と3月に実施された2024年度公立高校入試で初めて、月経による腹痛や頭痛といった月経随伴症状を追試験の対象に加えた。23年度まではインフルエンザと新型コロナウイルスの感染に限っていた。

 文部科学省が昨年12月に出した通知を受けた対応である。自然災害や試験会場に向かう途中の事件・事故、痴漢被害なども併せて対象に追加した。兵庫県教委は内訳を公表していないが、24年度は14人が追試を受けた。

 群馬県では、受験生向けの案内に追試対象として「生理による体調不良も含む」との一文を盛り込んだ。これまで入試要項に規定する「本人の責に帰さない理由」に該当するとして認めていたが、より分かりやすくしたという。

 10代のうちは生理の周期が不安定な場合が珍しくない。入試日と生理日が重ならないかは、ずっと以前から女子受験生にとっては大きな心配事だった。

 症状の重い人もおり、受験における生理への配慮は理にかなっている。しかし、追試の対象になったことを知らない生徒も多いと聞く。教育現場は告知に努めるとともに、生徒が安心して相談できる環境を整えてほしい。

 文科省は6月、来春の入学者を対象にした大学入試の実施要項を発表した。その中で、月経痛による欠席日数を合否判定で不利に扱ったり、推薦の要件を満たさないとみなしたりしないよう、全国の大学に求めた。これも初の取り組みだ。

 志願者が大学に提出する調査書には、高校での出欠状況を記入する欄がある。文科省は配慮すべき欠席理由として、月経随伴症状と新型コロナの後遺症を挙げた。高校、大学は実効性を高めてもらいたい。

 入試に限らず、学校現場は日ごろの教育活動において、生理に対する認識や対応を改善させていく必要がある。兵庫県教委は先日、高校で体調不良を訴えた女子生徒が体育の授業を見学することを認めず、生理による腹痛に不適切な発言をした男性教諭を懲戒処分にした。

 ジェンダー平等の観点からも、小中学校で男女が共に生理について学び、正確な知識を得ることが重要だ。理解あってこその配慮である。