パリ五輪が26日(日本時間27日未明)に開幕する。開催国フランスは近代五輪の父・クーベルタン男爵の母国だ。パリでの夏季五輪は1900年、24年に続く3回目となる。
普仏戦争(1870~71年)後の荒廃の中で、男爵は平和な世界に向けた国際的な競技会を構想する。国籍や文化の違いを超え、フェアプレーの精神で理解し合うという理念を掲げた。100年ぶりとなるパリ大会は、参加各国・地域が五輪の原点を再確認する機会にしたい。
3年前の東京大会は新型コロナウイルスの感染拡大で1年延期され、国民の賛否が分かれる中で開催された。女性蔑視発言で大会組織委員会会長が辞任するなどの問題が続き、閉会後には汚職・談合事件が発覚して20人以上が起訴された。
一連の不祥事では過度な商業化など五輪の在り方が改めて問われた。国際オリンピック委員会の「開催ありき」の姿勢も批判された。パリ大会ではこの教訓を踏まえ、新たな五輪像を示せるかに注目が集まる。
今回の開会式は史上初めて競技場外で行われ、選手らはパリ中心部のセーヌ川を船上パレードする。花の都らしい演出とはいえ、テロなど不測の事態も懸念され、警備体制は万全を期す必要がある。
ベルサイユ宮殿、コンコルド広場など、観光名所が競技会場になるのも今大会の特徴だ。95%の会場を既存か仮設にしてコストを抑える点は評価に値する。ただ、エッフェル塔前のビーチバレー会場などには日陰がない。他の競技も含めて猛暑時の体調管理に工夫が望まれる。
競技を行うセーヌ川の水質も不安材料だ。大腸菌の濃度が基準値を上回る日もあるという。水質が悪化すれば、競技会場を変えるなどの対処をする予定だが、選手の安全を最優先に冷静な判断を求めたい。
日本選手団は400人を超え、海外開催の大会では史上最多となる。兵庫ゆかりの選手は36人で、きょうだいでの連覇を狙う柔道の阿部一二三選手、阿部詩選手や陸上の2種目に挑む田中希実選手、マラソンの前田穂南選手、高飛び込みの玉井陸斗選手らの活躍が期待される。
残念なのは、体操代表だった19歳の宮田笙子選手が喫煙と飲酒を認め出場を辞退した問題だ。五輪出場の重圧を抱えていたとされ、本人の反省は言うまでもなく、周囲の支援が十分だったかも検証が欠かせない。
今大会のスローガンは「広く開かれた大会に」である。1900年の第2回パリ大会の女子種目はテニスとゴルフのみだったが、今回、男女の選手枠が初めて同数となる。あらゆる場面で平等が体現される平和の祭典になることを願う。