日本の東西を結ぶ大動脈が終日ストップし、主要駅の構内に人があふれ大混乱となった。
22日未明、愛知県蒲郡市の東海道新幹線豊橋-三河安城間で、レールの下に敷き詰めるバラスト(砂利)の運搬車両がバラストを突き固める車両に衝突し、作業員4人が負傷した。車両は脱線して撤去などに時間を要し、浜松-名古屋間が終日不通となった。上下328本が運休して約25万人が影響を受け、山陽新幹線もダイヤが乱れた。
新幹線の安全運行に欠かせない線路や電気設備の保守作業は、列車が走らない深夜から早朝に行われる。過酷な労働環境の中、機械化が進んだとはいえ熟練した技能やその伝承が重要な役割を持つ。JR東海は原因を徹底究明して再発防止策を講じるとともに、保守作業の現場で安全が十分に保たれていたのかを総点検する必要がある。
新幹線の保守用車両の衝突事故は2010年にも神戸市内のJR西日本管内で発生し、山陽新幹線の一部区間が約8時間半にわたり全面運休した。速度超過や衝突防止装置の作動遅れが指摘され、JR東海も接近警報装置の改良などを施してきた。
JR東海によると、今回は運転士のよそ見や居眠りなどはなく、保守用車両の警報装置や自動ブレーキにも問題がなかったという。しかし結果的にブレーキがかからず、衝突事故に至ったのは首をかしげる。改めてこれらの設備の作動状況をチェックしなければならない。
人手不足は鉄道の保守作業でも深刻だ。安全確保の体制や作業工程にそのしわ寄せが及んでいなかったかも、事故原因の検証に不可欠のポイントだろう。
今回明らかになったのは、東京-大阪間の人の移動が新幹線の輸送力に大きく依存している実態だ。1日平均約36万人が利用し、JR東海によるとシェアは約8割を占める。ひとたびストップすれば社会全体に大きな損失を与えるだけに、代替機能の必要性を痛感する。
政府は東海道新幹線のバイパスの役割を持たせるため、リニア中央新幹線や北陸新幹線新大阪延伸を国策に位置づける。しかし開通時期は見通せず、今回のような事態が起これば混乱が繰り返されるのは必至だ。
新幹線と並行する在来線の強化をはじめ、航空や私鉄、バスと連携した振り替え輸送の実施など、非常時を想定して現実的な対策を講じておくのは公共交通機関の責務である。
障害のある人や高齢者、訪日外国人など、さまざまな利用者ができるだけ円滑に移動できるよう、JR東海は今回の事故を契機に関係機関と協議を始めてもらいたい。