関西、神戸両空港の発着枠拡大に向け、淡路島上空を飛行するルートを増やすことで、関西の関係自治体と経済界が合意した。2025年4月に開幕する大阪・関西万博に合わせ、同年春からの運航ダイヤに反映される見通しだ。

 関空の発着枠は現在の1時間当たり最大45回から60回に増える。訪日外国人客の増加へ弾みとなりそうだが、地元住民には騒音被害や安全確保への懸念が根強い。国や兵庫県、両空港を運営する関西エアポートは新ルート直下の自治体や住民に丁寧に説明し、不安解消に全力を尽くす必要がある。

 国は昨年6月、官民でつくる「関西3空港懇談会」で新飛行ルート案を提示した。大阪湾上空の混雑を緩和するため淡路島を飛ぶ経路を現行の2本から7本に増やし、飛行高度の制限を引き下げる-などの内容だ。

 3空港懇は騒音軽減を求める地元側に配慮し、陸上部の飛行は午前6時半~午後11時に制限し、なるべく高く飛ぶことを前提に、今年7月に新ルート導入に正式合意した。

 ただ、これまでも午後11時~午前6時半の深夜・早朝は海上ルートを通過することになっているが、住民からはこのルールが守られていないなどの指摘が出ている。

 環境監視体制の拡充も示された。新ルートの運用開始に対応して、淡路島に騒音観測地点を増やす。1便ごとに飛行経路や騒音のデータをウェブサイトに公開して誰でも確認できるようになる。環境が改善されない時は3空港懇としても国に是正を求めねばならない。

 神戸空港の国内線も1日当たり最大80回から120回に増える。30年をめどに国際線の定期便就航も見据える。新ルート導入に伴い、関空到着便と交差する神戸出発便が高度3千フィート(914メートル)の低空で淡路島上空を飛行する場合がある。離陸時は着陸時に比べ騒音が大きいだけに、頻度を抑える工夫が不可欠だ。

 低騒音の新鋭機の導入拡大や防音対策への助成など住民の暮らしに十分配慮し、安全性と利便性を両立させてほしい。地域の信頼なくして新ルートの定着は難しいと肝に銘じるべきだ。