自民党の「政治とカネ」を巡る不祥事がまたしても発覚した。東京地検特捜部は公設秘書の給与を国からだまし取ったとする詐欺容疑で、広瀬めぐみ参院議員=自民離党=の関係先を家宅捜索した。実態解明へ徹底した捜査を求めたい。
「政治とカネ」の問題では7月中旬、選挙区内の有権者に秘書らを通じて香典を配った公選法違反の疑いで堀井学衆院議員=自民離党=の関係先が家宅捜索を受けたばかりだ。派閥裏金事件で政治不信が増幅する中、自民の腐敗体質の深刻さが浮き彫りになっている。
疑いがかかるたび議員に「説明を尽くせ」と人ごとのように語る自民幹部の当事者意識の欠如は目に余る。議員が離党しても、党の責任は免れないことは言うまでもない。
広瀬氏は2022年参院選岩手選挙区で初当選した。事務所などによると、広瀬氏は同年12月から23年8月まで、公設第1秘書の妻を第2秘書としていた。勤務実態がないにもかかわらず、第2秘書の給与として国から支払われた計数百万円をだまし取った疑いが持たれている。
この疑惑は今年3月の週刊新潮で報じられたが、広瀬氏は事務所のホームページで、第2秘書は事務作業や広瀬氏の送迎などの業務に当たっていたなどとして「事実無根」と反論していた。
事務所関係者は特捜部の事情聴取に対し、第2秘書には勤務実態がなかったと供述している。国会法は議員1人当たり3人の公設秘書を認め、国家公務員特別職として給与が公費で賄われている。弁護士でもある広瀬氏が違法性を認識していたとすれば極めて悪質であり、議員辞職に値する。広瀬氏は真偽について公の場で自ら語らねばならない。
公設秘書の給与を巡っては、1990年代後半から2000年代前半にかけて、与野党の国会議員による詐取事件が相次いだ。社民党衆院議員だった辻元清美参院議員(現立憲民主党)らが詐欺罪に問われ、有罪判決が確定した事例もある。
04年には国会議員秘書給与法が改正され、給与は秘書本人に直接支給されるようになったほか、議員による秘書への寄付の勧誘や要求が禁じられた。ただ、秘書が受け取った後で議員に渡す抜け道があると以前から指摘されていた。広瀬氏の疑惑が事実であれば、法改正の趣旨を踏みにじる行為である。
裏金事件を受け成立した改正政治資金規正法は、政策活動費の温存などの問題点を残した。裏金の経緯や使途など全容解明も不十分では腐敗体質は断ち切れまい。今度こそ自民党は不正を働いた議員を厳しく処分し、再発防止策を講じるべきだ。