今回の衆院選では、激甚化、頻発化する自然災害への対応が争点の一つとなっている。

 多くの党が元日に起きた能登半島地震の被災地復興を公約に掲げる。地震に加え、毎年各地を襲う豪雨災害への対応も急がれる。近い将来には南海トラフ地震や首都直下地震などの「国難」レベルの巨大災害の発生が高い確率で想定される。過去の経験と教訓を生かして被害を最小限にとどめなければならない。

 災害はいつどこで起きるか分からず、その都度様相が異なる。自治体レベルでは対応できない課題も多い。国民の命を守り、被害を減らし、復興への力を結集する。その体制づくりは国の最重要課題である。

 国の防災業務は内閣府と内閣官房が調整役となり、国土交通省や総務省消防庁などが分担している。多くの省庁が関わり、縦割り行政の弊害が指摘される。内閣府の防災担当は他省からの出向者が多く、短期間で戻るため、専門的な人材が育たないなどの問題点がある。

 石破茂首相は、持論とする事前防災から被災後の復旧・復興までを一手に担う「防災省」創設に向け、2026年度中に「防災庁」を設置する方針を掲げた。当面は内閣府防災担当の機能を人員や予算の両面で強化した上で、専任の閣僚を置くなどとしているが、具体的な組織の中身は十分に示されていない。

 防災省など常設機関の創設を巡っては、これまで全国知事会や関西広域連合などが必要性を訴えてきた。神戸新聞社も15年にそう提言した。一歩前に進んだとは言える。

 自民党、公明党が防災庁の設置を衆院選の公約に明記した。立憲民主党も「危機管理・防災局を設置」と打ち出す。日本維新の会は災害時の初動対応の改善策を提案する。

 備えが必要との認識では各党が一致している。東日本大震災を機に設置された復興庁の教訓と課題も論点となるだろう。防災庁の設置により被災地支援で国の権限が大きくなり過ぎることへの懸念もある。自治体への支援や協力態勢を強めるための組織であるべきだ。与野党の垣根を越えて具体案を持ち寄り、実現への議論を深めてもらいたい。

 防災を叫ぶ一方で、被災者を置き去りにしてはならない。発生から9カ月余りが経過した能登地震の被災地は豪雨禍にも見舞われ、復旧すら思うように進んでいない。過酷な避難生活で亡くなる災害関連死は増え続けている。暮らし再建への支援策を充実させることが不可欠だ。

 これからの災害への備え、被災地への支援はいずれも政治の責務である。各党、各候補者は防災・減災の具体策をもっと語ってほしい。