与野党の選挙公約で、共通点が目立つのは農業政策だ。各党とも38%にとどまる食料自給率の引き上げやコメの生産増、新規就農者拡大を打ち出す。
全国の店頭から一斉にコメが消えた今年夏の「令和の米騒動」を思い起こす。需要と供給のバランスが一時的に崩れた結果との見方もあるが、主食が入手困難になった事態は食料安全保障の根幹に関わる。その点を踏まえて農業政策のあり方を論じる必要がある。
農林水産省は2018年産で廃止するまでコメの減反を実施していた。消費が落ち込む中で生産を減らし価格を維持するためで、現在も水田を活用した小麦などへの転作を促す。
このまま生産が減れば今後もコメ不足を誘発しかねないが、生産増にかじを切っても需要減が続けば値崩れを起こし、しわ寄せは農業者に及びかねない。
対策として自民、公明、立憲民主、日本維新の会、国民民主の各党は農産物の輸出拡大を掲げる。一方、共産党は需要と供給の安定に政府が責任を持つと主張する。
輸出を増やせば需要も増える。国内で不足が生じても、輸出用を国内向けに振り替えれば対処できる。日本の農産物の品質や安全性をもっと世界にアピールして付加価値を高め、販路を拡大する戦略が重要だ。
農家への支援策では各党の違いが明確になった。自民は、中山間地での耕作持続や環境保全などへの取り組みを集落単位で支援する「日本型直接支払い」の維持強化を唱える。公明は生産コストの転嫁策の法制化、立民と国民は新たな直接支払制度の創設、共産は価格保障や所得補償の充実、維新は農地の集約や大規模化などを掲げる。
専業農業者の平均年齢は68歳を超え、後継者不足は深刻さを増す。日本は欧米に比べ、農家を直接支援する策が十分ではないとの指摘もある。農業者の生活を支えるとともに、新規就農者を呼び込み、農業全体の生産力を高める支援策が求められる。財源の議論も欠かせない。
農業は国民の命と暮らしを守り、地域振興にも密接に関連する。各党は作り手の意欲と消費者のメリットをともに高める具体策を示してほしい。