国内の今年夏の平均気温は昨年夏と並んで最も高かった。災害や農業などに影響する温暖化は地球規模の気候危機であり、国際的な課題である。日本政府も、2050年に二酸化炭素などの温室効果ガス排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」を目標にする。電力の安定供給などを図り、化石燃料に依存しない「脱炭素」をいかに進めるか。衆院選では各党のエネルギー政策が問われる。

 東京電力福島第1原発事故の教訓を踏まえ、現行のエネルギー基本計画には「可能な限り原発依存度を低減する」と記す。だが岸田政権は原発の最大限活用にかじを切った。福島の事故後「原則40年、最長60年」としてきた運転期間についても、60年超を可能にするGX(グリーントランスフォーメーション)脱炭素電源法を成立させた。

 法案には自民党と公明党、日本維新の会、国民民主党が賛成し、立憲民主党と共産党、れいわ新選組、社民党が反対した。

 衆院選でも原発を活用するかどうかが争点の一つだ。各党の主張を慎重に見定めたい。

 自民は従来の方針を踏襲し、脱炭素効果の高い電源として原発活用を訴える。同じ与党の公明は、将来的に原発に依存しない社会を目指すとしている。

 野党では、維新が次世代原発の活用などを掲げ、国民もカーボンニュートラルに寄与するとして、原発の新増設などを主張する。立民は党綱領にある原発ゼロについて公約では触れなかった。ただし地元合意がない再稼働などは認めないとする。一方、共産は30年度に原発ゼロとし、れいわは即時廃止、社民も稼働ゼロを公約にしている。

 推進なら安全対策にどう取り組むのか、反対なら当面の電力をどうやって確保するかなど、具体的な説明が求められる。

 太陽光や風力といった再生可能エネルギーについては、各党とも「活用」の方向で一致する。ただ、大容量の次世代蓄電池の開発、送電網の強化などの課題がある。各党は解決の方策についても示してもらいたい。

 エネルギー基本計画は3年ごとに見直されており、本年度はその時期に当たる。衆院選を、中長期的な政策の議論を深める機会にしなければならない。