衆院選は、きょう投開票日を迎えた。自民党派閥裏金事件に象徴される「政治とカネ」の問題や物価高対策などへの有権者の関心は高く、一票の行使が今後の国政に大きな影響を及ぼす選挙となりそうだ。

 今月発足した石破茂内閣の信任を問うだけでなく、自民が2012年に政権復帰して以降、与党の圧倒的多数を背景に強引な政権運営が目立つ「1強政治」に審判を下す場となる。

 共同通信などの世論調査では裏金事件を受けた自民、公明両党の苦戦が伝えられるが、どの候補、政党に日本の将来を託すのか、まだ悩んでいる有権者は多いのではないか。

 3年ぶりの政権選択選挙で争点は多岐にわたるが、唐突な解散、短期決戦で各党の公約や候補者の訴えを十分に吟味できなかった人もいるだろう。

 審判の行方とともに、有権者の「選挙離れ」に歯止めをかけられるかどうかが気になる。

 衆院選の投票率は09年、69%に上った。旧民主党による政権交代が実現した選挙だ。しかし自民が政権に返り咲いた12年以降、21年まで4回の選挙はいずれも50%台で、戦後のワースト1位から4位を占めている。

 とりわけ憂慮すべきなのが、若い世代の投票率の低さだ。

 今回の衆院選は16年に「18歳選挙権」が導入されて以降、6度目の国政選挙となる。政府は啓発や主権者教育に力を入れてきたが、効果は十分ではない。総務省によると、過去5回の国政選挙で60代の投票率が60~70%台だったのに対し、10~20代は30~40%台にとどまる。

 主権者教育に詳しい龍谷大の川中大輔准教授は「授業で地域社会への関心は促しても、政治への働きかけは今なお敬遠されがちだ」と指摘する。投票は大事だと教えながら、踏み込んだ議論を避けて通る。これでは関心は高まりようがない。

 若者だけの問題ではない。主権者としての大人の振る舞いを見直す機会にしたい。無関心は国民不在の政治を許す温床となる。現政権を信任するにせよ、政権交代を望むにせよ、熟考して責任ある行動を取ることだ。

 白紙委任はしない。迷い、悩んで投じる1票の積み重ねが、政治を変える一歩となる。