宮城県女川町・石巻市の東北電力女川原発2号機が再稼働した。2011年の東日本大震災で、国内にある全原発が停止した。その後、関西電力の美浜、大飯、高浜原発、九州電力と四国電力の原発は運転を始めたが、東日本で再稼働するのは初めてとなる。原発の「最大限活用」を方針に掲げる政府と電力業界にとって一つの大きな節目となった。
女川原発は震災被災地に立地し、事故を起こした東京電力福島第1原発と同じ沸騰水型軽水炉だ。原子炉内で水を沸騰させ、その蒸気でタービンを回して発電する。これまでに稼働した原発が採用する加圧水型より、原子力規制委員会が高い基準の事故防止対策を求めてきた。安全性について今後も厳しい視線が向けられると自覚してもらいたい。
東日本大震災で女川原発は想定を約4メートル超える高さ約13メートルの津波に襲われた。地震直後に1~3号機が自動停止し、津波の影響で一部の建屋の地下に浸水したものの、放射性物質の漏れなどはなかった。だが敷地は海抜約15メートルとぎりぎりの高さだった。事故が起きていてもおかしくなかったと言わざるを得ない。
再稼働に向け、東北電は13年から安全対策工事を進めてきた。最大23・1メートルの津波を想定し、国内最大級とされる海抜29メートル、総延長800メートルの防潮堤を整備した。原子炉建屋の耐震性、電源・冷却機能などを強化したほか緊急時の建屋も設けた。
さまざまな対策を講じたとしても、災害や事故には常に「想定外」がつきまとう。再稼働した以上、さらに安全意識を高め、常に万全の備えを怠らない姿勢が欠かせない。
ところが女川原発ではトラブルが相次いでいる。6月と9月、事故時に放射性物質が外部に漏れるのを低減する「非常用ガス処理系」という機器が誤作動した。原子炉建屋で計約4リットルの水が漏れる事案も9月にあった。大きな事故につながらないよう、再発防止策を徹底してほしい。
万一の事故時に懸念されるのは住民の避難だ。女川原発は、集落が点在し細い道も多い牡鹿半島にある。震災では道路が寸断し、原発構内に避難した被災者もいた。再稼働を巡っては、石巻市民が自治体の避難計画に不備があるとして差し止めを求める訴訟を起こしている。住民が不安を抱くのは十分理解できる。
一審判決では差し止め請求が棄却され、控訴審判決が11月に仙台高裁で言い渡される。どのような判決になっても、安全に対する東北電や自治体の責任に変わりはない。1月の能登半島地震でも集落の孤立などが起きた。避難計画に課題がないかを常に検証し、必要があれば適切な見直しにつなげねばならない。