前兵庫県知事の失職に伴う知事選が告示され、17日の投開票に向けた論戦が始まった。
告発文書問題への対応を巡り、県議会の不信任決議を受けた斎藤元彦氏による県政運営の是非や、知事の資質が争点となる。県民の暮らしに深く関わる選択だ。有権者は候補者の主張に耳を傾け、公約を吟味して1票を投じてほしい。
立候補したのは、いずれも無所属で、前参院議員の清水貴之氏(50)▽前尼崎市長の稲村和美氏(52)▽前知事の斎藤元彦氏(47)▽病院院長の大沢芳清氏(61)=共産推薦▽会社社長の福本繁幸氏(58)▽政治団体代表の立花孝志氏(57)▽会社社長の木島洋嗣氏(49)-の7人。
2021年の前回知事選で斎藤氏を推薦した自民党は、県議団が独自候補擁立を断念した。再選を目指す斎藤氏の支援を禁じた上で自主投票としたが、一部市議が反発している。同じく前回斎藤氏を推薦した日本維新の会は離党した清水氏を支援する。与党が大敗した衆院選の結果がどう影響するかも注目される。
選挙戦でまず問われるのは、失墜した県政の信頼回復だろう。
文書問題は3月、元西播磨県民局長が斎藤氏のパワハラなどの疑惑を告発し表面化した。県は元局長を内部調査で懲戒処分としたが、公益通報者として保護すべきだとの批判があり、県議会が調査特別委員会(百条委員会)で究明を続けている。
斎藤氏は文書問題について「反省すべきは反省し改める」と訴えた。清水氏は「悪い印象を拭い、よい形で兵庫を発信」、稲村氏は「対話と信頼で抜本改革」、大沢氏は「県政の根幹を正す」、福本氏は「長がかわれば県が良くなる」と主張した。
神戸新聞社が有権者に争点を尋ねた調査では「知事の資質」が29・0%と最多で、「県政の再建」が23・0%と続く。斎藤氏は一連の問題への説明を尽くすことが求められる。混乱が続く県政の立て直しや公益通報制度の在り方について、他の候補も具体策を語ってもらいたい。
斎藤県政が3年間に打ち出した施策への評価も焦点となる。
実績に掲げる行財政改革は道半ばだ。企業業績回復による税収増もあり、県の貯金に当たる財政調整基金は23年度末で約30年ぶりに100億円を超えたものの、阪神・淡路大震災で背負った債務は今も重い。
若者支援の一環として始めた県立大学無償化の是非、県庁舎再整備の方向性など、各候補は課題への処方箋を有権者に示し、県政への関心を高める好機としなければならない。
限られた財源で何を見直し、どの課題に優先して取り組むか。県民のための政策を競い合う論戦を望む。