兵庫県内に本社や本店を置く上場企業69社が、2024年9月中間決算の発表を終えた。株主や取引先などに示す本年度上半期の通知表のようなもので、最終的なもうけを示す純損益は半数超の38社が前年同期を下回る結果となった。
新型コロナウイルス禍で、地域経済が大打撃を被ってから4年が過ぎた。コロナ禍前の業績を回復した後、利益の増加ペースも一服した企業が多いとみられる。今後の環境変化に対応して再び増益基調を取り戻せるか、動向を注視したい。
減益の要因は原材料やエネルギー価格の高止まりに加え、人手不足に伴う人件費などのコスト上昇だ。外国為替市場で円相場が乱高下した影響も一部に見られた。
気になるのはこの先、国際情勢の急激な変化が見込まれることだ。来年1月に就任する米国のトランプ次期大統領は、自国第一主義で関税引き上げなどを強行する可能性がある。
対中国で強硬姿勢を貫き、米中貿易摩擦が深刻になれば、輸出系企業を中心に、中国との結びつきが強い関西経済への影響は免れない。
トランプ氏の打つ手は予測不能なだけに、県内各社のトップも決算発表の会見で「先が読めない」と不安を隠さなかった。円相場の乱高下も再発しかねず、25年の経営リスク要因になるのは必至だ。
一方で、小売りやサービスなど内需型企業では、売り上げが順調に伸びた例が目立った。全国的にも同じ傾向にある。
大手を中心に、物価上昇を反映して23、24年と2年続けて賃上げを実施した企業は多かった。それによって消費が活気づいたことがうかがえる。
モノの値段が下がり続けたデフレから脱却して、賃金と物価がともに上がる好循環が定着するのか、日本経済は正念場に差しかかっている。25年の春闘でも物価上昇を上回る賃上げの実現が不可欠になる。
減益企業は半数を超えたが、利益水準は過去と比較して高い例が多い。価格交渉などを通じて、自社だけでなく取引先の持続的な賃上げも可能にすることが経済成長の基盤であると、経営者は十分に認識してほしい。