森友学園に関する決裁文書改ざん問題で、かたくなに情報公開を拒んできた財務省の姿勢を厳しく断じる逆転判決が出た。
改ざん作業を強制されたのを苦に2018年3月に自ら命を絶った元近畿財務局職員赤木俊夫さんの妻雅子さんが、財務省に対し大阪地検特捜部に提出した関連文書の開示を求めた。同省は21年、文書が存在するかどうかも明らかにせず不開示を決定し、雅子さんは決定の取り消しを求めて提訴した。一審の大阪地裁は請求を棄却したが、先月30日の控訴審判決で大阪高裁は訴えを認め、不開示決定を取り消した。
財務省は判決を受け入れて関連文書を開示し、改めて全容解明に取り組まなければならない。
一審の大阪地裁は、捜査への支障を理由に開示を拒む財務省側の主張を追認した。これに対し、大阪高裁は開示請求の時点で関係者の不起訴処分が確定し、捜査が終結していたことなどから「支障を及ぼす恐れがあるとは言えない」とした。
判決は、文書の存否すら答えない財務省の対応を「情報公開法の要件を欠き違法」と批判した。同法には、行政機関が文書の存否を答えずに開示請求を拒否できる例外的な規定がある。だが例外の乱用を許せば開示すべき情報まで恣意(しい)的に隠蔽(いんぺい)される恐れが生じ、制度への信頼が揺るぎかねない。司法から行政への警鐘と受け止めるべきだ。
財務省の調査報告書などによると、安倍晋三元首相が国会で「私や妻が関わっていれば総理も議員も辞める」と答弁した後、改ざんが始まった。改ざんの過程をまとめた「赤木ファイル」は雅子さんの訴えで開示されたが、関わった職員名などの多くは黒塗りにされ、指示系統などの詳細な経緯は判然としない。
今回の不開示決定に対する不服審査請求で総務省の審査会は昨年、決定取り消しを答申したが、財務省は応じなかった。雅子さんが国などに損害賠償を求めた別の訴訟では、国側が釈明することなく請求を受け入れ一方的に訴訟を打ち切った。
財務省はそこまでして何を守ろうとしたのか。なぜ森友学園に国有地が格安で売却され、どのように改ざんに手を染めたのか。誰も責任を問われず、国民の不信がくすぶり続けている。同じような問題を繰り返さないためにも、背景を含めて事実関係を明らかにする責務が政府にはある。国会での説明は欠かせない。
行政文書は国民の共有財産だ。「真相を知りたい」との訴えは雅子さん一人の願いにとどまらない。保存、開示することで意思決定過程の検証を可能にし、健全な民主主義社会を築く礎として生かすべきだ。