埼玉県八潮市の交差点で先月28日午前、陥没した県道にトラックが転落し、74歳の運転手が閉じ込められた。当初は意識があり会話できる状態だったが、運転席に土砂が流入するなどしてやりとりが途絶えた。
埼玉県によると、地下に埋設された下水道管が老朽化で腐食し、周辺の土砂が流れ込んだため道路下の土壌がもろくなっていた。その上を多くの車が通り陥没した可能性があるという。
県は12市町の約120万人を対象に洗濯や風呂の自粛と節水を求め、重機による救出を急ぐが、周辺の地盤が緩いため作業は難航している。発生からすでに1週間以上がたつ。一刻も早く救助してほしい。
陥没は事故後も広がり幅約40メートル、深さ約15メートルに達した。ガス管や通信ケーブルなど地下にある他のインフラへも影響は広がっている。ガス供給などはほぼ復旧したが、大規模な地下インフラの破損が複合的な被害を引き起こすことを、国や管理者の自治体は教訓とするべきだ。
下水道管の老朽化は全国的な課題となっている。国土交通省によると、2022年度に全国で発生した道路陥没は計1万548件でうち13%は下水道が原因だ。幅1メートルを超す陥没も相次いでいるという。同様の被害はどこでも起こりうるという前提で対策を講じる必要がある。
兵庫県は阪神間の下水処理場2カ所に接続する大型の下水道管の調査を始めた。神戸市では国の示す点検対象はなかったが16・9キロを独自に調べている。ほかにも懸念すべき施設があれば、調査対象を広げ不安を払拭することが求められる。
全国の下水道管の総延長は約49万キロに達する。1970年代から整備が加速したため標準耐用年数の50年を迎える管路はますます増える。目視による点検は難しく、八潮市の事故では21年の点検で修繕の必要なしとされていた。今後は人工知能(AI)など最新技術を活用し調査の精度や効率を高めたい。
国土強靱化(きょうじんか)を掲げる国は、上下水道を含め災害に強いインフラ整備を目指すが、必要な体制や人材は不足している。まず老朽化の状況を正確に把握し、長期的な視野で整備や点検の在り方を見直さなければならない。